[女子シングルス決勝]
○岡村恭香(橋本総業ホールディングス)[2] 7-6(2),3-6,6-4 ●清水綾乃(Team LB)[5]
■「自分との勝負と、相手との勝負、敵が二人いるような状態だった」。試合直後、テレビ中継を行ったNHKのインタビューで岡村が明かした。全日本選手権のタイトルはまだ手にしていなかった。「どうしても欲しいタイトル」だけに、これまでは緊張して本来のプレーができなかった。今大会も自分との闘いを強いられた。1回戦から大苦戦、大学生の星野桃花(東京国際大)を3-6,7-6(0),6-1で辛うじて振り切る。「今日こそは負けたなって思う試合」の連続だった。その闘いについて岡村が振り返る。
■「日本の最高峰の大会で、どんなに意識しないよう心がけたとしても、優勝したいし、どうしても勝ちたくてしょうがないから、いつも通りのプレーは無理。でも、今回は、うまくいかない自分も受け入れながらプレーできた。今日の決勝でも、何回も何回もリードされて、でも、もっと自分はできるはずなのに、じゃなくて、これが自分だなと。うまくできないところも含めて、今できることを精一杯やろうって」
■もちろん、清水という目の前の「敵」も手ごわかった。18年大会のタイトルを持つ清水は、快勝で初戦を突破すると「タイトルを取りたいと思うとどうしても硬くなるが、(今は)そういう意気込みがないので、そこが強みかな」と話した。いたずらっぽい口調だったが、初戦から決勝まで、その強みを存分に発揮する。強打は冴え、決勝でもロングラリーで岡村に打ち勝つ場面が少なくなかった。
■岡村は相手のプレーについて「今まで対戦した中で一番と言っていいほど、ストロークが強力で、冴えていて、押し込まれる場面が多かった」と評した。痛めていた右太ももは決勝でさらに悪化した。もともとショットの質が高い岡村だが、なかなかラリーを支配できなかったのは、硬さに加え、疲労や負傷の影響もあったと思われる。だが、気持ちで押し返した。「相手もものすごく勝ちたいと思って向かってくるわけで、自分が120%出しにいかないと、中途半端なプレーでは相手の全力を押し返して上回ることはできない。それをようやく心の底で理解して、少しずつ体現できるようになってきている」と岡村。これも、長年、自分と向き合う中で得た教訓だった。
■岡村の言葉を借りれば「全ポイント、お互いのベストを尽くした」試合は、そうして岡村が勝利を得た。初出場は14年、7度目の出場で初めての皇后杯を手にした。「遠かったなんてもんじゃない。ほんとにできると思っていなかった」と岡村。自分に勝つという、一番難しい闘いに挑んできた者の正直な気持ちだろう。
(日本テニス協会)
本記事は、日本テニス協会メールマガジン「Tennis Fan」の抜粋です。「Tennis Fan」の購読ご登録はこちらから!
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