JTA
JTA 日本テニス協会 Japan Tennis Association FOR ALL THE PEOPLE WHO LOVE TENNIS
トップページ 日本テニス協会 ナショナル トーナメント ランキング プレイヤー 普及指導 サイトマップ
International JTA Report 海外レポート
2006.8.3 フェドカップ・ワールドグループ入替戦 日本対オーストリアレポート

















日本はオーストリアを5-0で破り、世界8強入りを果たした。
来年はワールドグループ1で戦うことになった。

※『JTA OFFICIAL BLOG』で当日の画像をご覧になれます。

第1日

フェドカップ・ワールドグループ入れ替え戦の対オーストリア戦が有明コロシアムで開幕。日本は第1試合に登場した森上亜希子、第2試合の杉山愛がともにストレートで勝ち、ワールドグループ昇格まであと1勝とした。

シングルス第1試合


森上亜希子
7 - 6 6 - 0
バルバラ・シュワルツ

広報委員・フリーライター 辛 仁夏

開会式が終わった後、日本チームは円陣を組んで掛け声を発し“いざ出陣!”の気合を入れた。世界8強入りを懸けたオーストリア戦は、日本にとって絶好のチャンス。植田実監督をはじめ、選手全員が一丸となっているのが分かった。

緊張感漂う開幕試合に登場した“切り込み隊長”役の森上亜希子に、いつもの動きの良さが見られない。第1セットの立ち上がりから、どこか反応が鈍い感じだった。「珍しく、緊張ぎみにコートに入ってしまった。慎重になりすぎた」と振り返る。個人戦と違い、国を代表しての団体戦は、やはりプレッシャーを感じるという。それに加え、今回のプレーオフは、大きな目標のワールドグループ1昇格が懸かる大事な戦いだ。いつも以上のプレッシャーを感じるのも理解できる。

第1セットはともにブレークで始まり、その後はサービスキープが続く。左ききのシュワルツは、懐深いフォアハンドに切れ味のあるバックハンドスライスを織り交ぜて、ゲームを組み立てた。「ボールを打つタイミングも攻めるタイミングも少しずつ遅れ、引き気味にプレーしていた」という森上は、自分のリズムがまったく掴めない。

内容ではシュワルツを上回っているのに、ペースを握れない。第5、第7ゲームのブレークチャンスをものにできず、チャンスを逃し続けたことで、4-5で迎えた第10ゲームでは相手に2度のセットポイントを握られた。だが、ここで踏ん張った。意識的に足を動かしてボールに変化をつけて打ち合ってリズムを出し、サーブをしっかり打ち込んだ。

セット終盤になってやっと自分のリズムが出た森上は、ペースを奪い返した。タイブレークでは、速い展開に持ち込み相手を圧倒。得意のフォアの逆クロスやライジングショットで、あっという間にポイントを重ね、セットを奪った。
第2セットはもう森上の独壇場。先に仕掛けて、相手を翻弄。ネットプレーを得意とするシュワルツをあえてネットに誘い出し、そこに手も足も出ないパッシングショットを打ち込んで、戦意を失わせた。最後までしっかり走り回り、波に乗って一気に勝負をつけた。最後の2ゲームは連続8ポイントを一気に奪取。このセットは、相手にわずか14ポイントしか与えずに6ゲーム連取の圧勝だった。
森上は勝利の瞬間、固かった表情を崩し、ベンチに向かって力強くガッツポーズ。一番手の役目をきちんと果たした森上は「ほっとしています。第1試合は重要な試合だしチームにいい流れを引き寄せたかった」と満足そうな笑顔を見せた。

シングルス第2試合


杉山愛
7 - 5 6 - 1
メラニー・クラフナー

広報委員・フリーライター 秋山 英宏

慎重に慎重に、杉山は試合を進めていった。相手のクラフナーは16歳のジュニア。ツアーでの実績はほとんどなく、当然、情報もなかった。相手が格下だけに“勝って当たり前”の重圧もあった。さらに、会場の暑さも杉山を苦しめた。一方、初めてフェドカップに臨むクラフナーは、のびのびと攻撃的なプレーを続けていた。第1セットは互角の展開で5-5ともつれた。しかし、植田監督が振り返ったように、ここで両者の「力の差」が出た。杉山が第11ゲームでラブゲームでブレークし、次のサービスをキープして第1セットを先取する。

少しだけ背中の荷物が軽くなった杉山。第2セットのスタートは順調だった。ところが、予想もしていなかったアクシデント。杉山は3-0からのサービスゲームで脚に違和感を覚え、続く第5ゲームのデュースの場面でトレーナーを要請する。暑さと緊張感の中での戦いで、杉山は両足にけいれんを起こしていた。

村木トレーナーの処置を受けた杉山は再びコートへ。このゲームを奪って4-1とすると、次のサービスゲームは6度のデュースの末にキープ。勝利をグッと引き寄せた。「前にも(同じような状況で)すぐに処置を頼むことによって回復したことがある。あのときトレーナーを呼んだのは正解だった」と杉山は振り返る。体の違和感を察知し、すぐに手を打てるのもまた、経験のなせるワザだろう。

終わってみれば7-5,6-1の完勝。しかし、内面では壮絶な戦いが繰り広げられていたはずだ。ランキング上位のシビル・バンマーを欠いたオーストリアは確かに「格下」だが、第1試合の森上といい、この杉山といい、世界の8強入りを目前にした選手たちが感じる重圧は計り知れない。しかし、森上と杉山はみずからのラケットでプレッシャーを振り払い、日本はワールドグループ1昇格に王手をかけた。

「自分で自分を苦しめてしまうところがあった」と反省する杉山。しかし、「ここというところを締めることができた。いい感じで明日につなげられたと思う」とホッとした表情を見せた。植田監督も「団体戦では何が起きるか分からないのは承知している。彼女たちには、そこを踏ん張れる力がある。2-0という結果には満足している」と、胸を張った。

「初めてのフェドカップの試合でしたが、いい試合ができたと思います。すべてのポイントで全力を尽くすことができた。いい経験になったので、将来に向けて努力を続けたい」と初々しいクラフナー。テサール監督は「チームの将来にとって、新たな戦力が見つかったと感じている」と16歳の健闘を称えた。0-2という結果に関してもテサール監督は「シュワルツはカムバックの過程にいる選手で、クラフナーは初のフェド杯。彼女たちがいいプレーをして、ひとつずつでもセットがとれれば成功と我々は考えている」と前向きだった。


第2日

フェドカップ・ワールドグループ入れ替え戦、対オーストリア戦の最終日、日本は杉山愛に代えて起用した中村藍子がストレート勝ちを収め、3連勝で来シーズンのワールドグループ1(8カ国)昇格を決めた。引き続き行われた森上亜希子のシングルス、最終戦の杉山愛/浅越しのぶのダブルスにも連勝。5-0の完勝だった。日本の8強入りは97年以来10年ぶりとなる。

シングルス第1試合


中村藍子
6 - 2 7 - 5
バルバラ・シュワルツ

広報委員・フリーライター 辛 仁夏

前日、2-0と王手をかけた日本にとって、勝負はこの日の第1試合だった。エース同士の対決となるはずだったが、植田実監督は「確実に3勝目のポイントを取るための戦略的な変更」と、初日のプレー中に足をつった杉山愛に代えて中村藍子を起用した。

今回、最初の出場メンバーに選ばれなかった中村だったが、急きょ交代出場で相手のエースとの対戦となった。昨日の時点で、監督から“ピンチヒッター”を告げられていたこともあり、心の準備はできていたようだ。「たまたまチャンスが回ってきたが、このチャンスを生かさなくてはいけないと思った」と、世界トップ8入りがかかる試合に臨む意気込みは強かったという。

その気持ちが極度の緊張を生んだのだろう。第1セットの立ち上がりは「どうしようかと思った」と振り返るほど浮き足立っていた。第1ゲームをラブゲームで落とし、第2ゲームは40-30から9度のデュースの末、6度目のブレークポイントを守りきれずサービスダウン。

このままズルズルと崩れるかと思ったが、厳しいツアーでもまれ、トップ100のランキングをキープしている次代のエースは逆に気合を入れ直したようだ。打ち合いで緊張もほぐれたようで、「3ゲーム目からリラックスできて自分のテニスができた」

第3ゲームからは、要所でファーストサーブがコースに決まり、ストロークではしっかりした深いボールを打ち込んで優勢に立つ。ベースラインに釘付けにして、6ゲーム連取でセットを奪った。

第2セットは、テンポの速い展開に持ち込み、シュワルツのバックサイドを意識的に狙いながら、深いボールを散らしてペースをつかんだ。しかし、相手も国を代表するエースだ。中村のミスを見逃さずに反撃して粘りのプレーを見せる。このセットは激しい攻防となった。4-4からブレークで5-4にし、第10ゲームを迎えた。

サービスエースなどであっという間に40-15。最初のマッチポイントではサーブアンドボレーを見せた。果敢なチャレンジだったが、相手の好リターンにローボレーはアウト。2度目も取れずに、結局、ブレークバックを許した。際どい勝負の行方は、どちらに転んでもおかしくなかったが、5-5からの第11ゲームでも中村はひるむことなく、攻め続けた。

後がないシュワルツは「中村はプレーもショットも速くて対応が難しかった。第2セットはドロップショットやロブを打って相手のリズムを崩そうとしたができなかった」と、反撃も第10ゲームまでで力尽きたようだ。最後は、中村が強烈なショットで圧倒して再度ブレーク。第12ゲームはラブゲームでキープして締めくくった。

勝利の瞬間、中村ははにかんだような笑みを浮かべて安どの表情を見せ、喜びを噛み締めていたが、「ヨーロッパでは絶好調ではなかったし、調子は上がってきたがまだ不安があったので、勝ててうれしい。10年ぶりにベスト8に入れたことは本当にすごいこと」と、チームに貢献できた喜びの大きさもあって、チームメイトに囲まれ感極まってうれし涙を流した。

試合後の会見で、今日のキーポイントと勝因を問われた中村は「第1セット0-2からのスタートだったが、そこで離されないでついていけたこと、そして、第2セットでは2つのマッチポイントを取れなかったが、気を落とさずにしっかりその後のゲームを取れたこと」と、最後まで手を緩めなかった攻撃的なテニスが功を奏した。また、「最初のマッチポイントではプレッシャーはあったが、あのときのサーブアンドボレーは間違いじゃない」とも付け加えた。

過去2戦のブルガリア、スイス戦でも、3勝目の勝負がかかったところで出番が回ってきた中村は、今回もその大役を見事に果たした。「いいところをもっていかせてもらっているが、その前に森上さんや杉山さんが頑張って2勝してくれたから」と謙虚に話した。


シングルス第2試合


森上亜希子
6 - 2 6 - 3
ニコラ・ホフマノバ

毎日新聞 長野 宏美


第1試合で中村が日本の勝利を決め、オーストリアは15歳のホフマノバにメンバーを替えた。ITFジュニアランク34位の若手にとって、世界ランク48位の森上との対戦は貴重な経験。ホフマノバは「失うものは何もない」と伸び伸びとしたプレーでぶつかってきた。一方、“消化試合”で格下と対戦する森上は、「ベスト8の重圧」から解き放たれ、新たな敵は気持ちの切り替えだったといえる。中村が勝つと、「こらえきれず泣いてしまった」というが、「フェド杯は5戦終えてすべて終了。自分が4-0にする」と気を引き締めた。

初日は緊張して慎重にプレーしすぎたが、この日は、相手が替わっても戸惑いはなかった。最初のゲームこそ、相手にキープを許したが、力の差は歴然としていた。力強いストロークで左右に散らすと、相手はついてこられない。森上はドロップショットやネットプレーも織り交ぜ、完全に主導権を握った。第1セットは46本中、30本を奪い6-2で先取する。

第2セットは2-2までサービスキープの展開。相手が必死に食らいついてきた球を決めきれず、ミスを重ねる場面もあった。だが、過去のフェド杯のシングルスでは9勝1敗。日の丸を背負うと、絶大な力を発揮してきた森上。トップ50の力を見せつけて6-3で圧勝した。ホフマノバは「ジュニアと違ってミスが少ないし、自分から攻めないとポイントはもらえない」と脱帽だった。

この勝利で代表としてはシングルス10勝目。敗戦は04年4月にアルゼンチンのスアレスに対する1敗のみ。「フェド杯は国を背負うプレッシャーがあるが、いつもいいプレーを引き出してくれる」と語る。昨年のチェコ戦で2勝したことが自信となり、「ツアーで調子がいまひとつの時でも、フェドに来れば大丈夫だという安心感がある」と話す。

初日は硬い表情だったが、仲間とシャンパンをかけ合って喜びを分かち合い、「勝てて最高の気分。プレッシャーの中、勝ったことで今までと違った意味で自信になった」と笑顔を見せた。全仏では世界ランク3位のペトロワを破り、今回も確実に2勝を上げた。“フェド杯の女王”は夏のツアーでもばく進してくれそうだ。


ダブルス


杉山愛
浅越しのぶ
6 - 3 1 - 6 6 - 1
メラニー・クラフナー
バルバラ・シュワルツ

広報委員・中俣 拓哉

日本はダブルスも取って、気持ちよく世界のトップ8に乗り込んで行きたいところだ。第1セットは、この対戦初出場となる浅越が少し硬さを見せるが、自力で勝る日本ペアが6-3で先取。ところが第2セットに入ると、日本チームのリズムがことごとくかみ合わなくなる。そこにうまくつけ付け込んだオーストリアペアが6-1と取り返し、今大会初めて日本からセットを奪う。

しかし第3セットでは、いままで思うようにショットが決まらなかった浅越の動きが見違えるように良くなった。すると杉山の鋭いサーブも決まりだし、このセット6-1と圧倒。これで日本は全勝で入れ替え戦を制し、ワールドグループ1への進出を決めた。

ワールドグループ1昇格! 97年以来10年ぶりの世界8強入り

植田監督は2日間の対戦を「組み合わせなどラッキーな面もあったが、選手一人一人が自分の仕事をしてくれたことが大きい。他国はトップ選手の欠場が目立つが、選手たちが日の丸のもとに集まってくれたことに感謝している」と振り返った。また、来季のワールドグループ1での戦いに向けて「やっとスタートラインに立てた。強豪8カ国の中でプレーできるということが、日本選手にとって大事。互いに国の代表というイーブンな状態でトップ選手と対戦できることの意味は計り知れない。そのチャンスを得たことが大きい」と語った。

日本のワールドグループ1復帰は04年以来だが、当時は同グループが16カ国で構成されていた。世界の上位8強入りとなると97年以来10年ぶりとなる。来季のワールドグループ1の組み合わせは国際テニス連盟が9月に行う抽選で決まる。

本レポートはJTA公式メールマガジン「Tennis Fan」掲載記事を編集したものです。

[リンクについて] [JTA公式バナーについて] [個人情報保護方針]
COPYRIGHT(C) 2000 -2007 ALL RIGHTS RESERVED BY JAPAN TENNIS ASSOCIATION SINCE OCT. 2000
本サイトで使用している画像・テキスト・データ等すべてにおいて無断転載、使用を禁じます。本サイトはスポーツ振興くじの助成を受けて作成しています。
財団法人日本テニス協会 〒150-8050 東京都渋谷区神南1-1-1 岸記念体育会館 Phone:03-3481-2321  E-mail mail@jta-tennis.or.jp