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ジュニアデビスカップ(男子)、ジュニアフェドカップ(女子)の世界大会が、9月28日(火)より10月3日(日)までスペインのバルセロナにて開催されました。
大会前日
快晴のスペイン・バルセロナ。この街の由緒あるスポーツクラブ、レアルクラブ・デ・ポロで、明日(28日)、16歳以下の国別対抗戦、ジュニア・デビスカップ(男子)、ジュニア・フェドカップ(女子)が開幕する。この原稿は、会場に設けられた選手用ラウンジで書いている。各国の選手が思い思いに過ごすラウンジ。英語、スペイン語、中国語と、さまざまな言語が行き交っている。吹き抜けのテラスには、隣接する芝生のグラウンドから気持ちのいい風が吹き抜けていく。
大会には男女各16チームが出場する。日本チームは男女ともアジア/オセアニア地域予選を突破し、世界大会の出場権を得た。男子は、上位4カ国に世界大会の出場権が与えられる予選を3位で通過。一方、女子は、アジア/オセアニア地域に与えられた出場枠は3だった。日本チームは準決勝で敗れたものの、世界大会出場を懸けた3位決定戦でオーストラリアに勝って、3枚目の切符を手にした。地域予選には、テニス大国オーストラリアをはじめ、インドや、近年、力をつけている中国、台湾など強敵が揃っていた。男女揃って予選を勝ち抜いての世界大会出場は、快挙と言っていいだろう。
日本代表は、男子が富田玄輝、喜多文明、錦織圭の3選手。チームを率いるのは村上武資監督。女子は瀬間詠里花、伊藤絵美子、森田あゆみの3選手を、岩本功監督が束ねる。男子の3人は盛田正明テニスファンドのバックアップで現在、アメリカにテニス留学中。女子の森田はまだ14歳。今年の全日本ジュニアでは18歳以下に出場し、年上の選手を相手に堂々の優勝を飾った。伊藤と瀬間は、同大会16歳以下の優勝、準優勝者。いずれも次代の日本を背負って立つ若者たちだ。
今日(27日)の午後、行われた抽選会の結果、男子は第2シードのスペイン、フランス、オーストラリアと同組となった。強豪ばかりの組に入ったが、「選手はみんな、優勝するつもりでいます」と村上武資監督。選手たちは明日の開幕が待ちきれない様子だ。
女子はシード国のクロアチアとモロッコ、オランダと同組。マリオ・アンチッチの妹がいるクロアチアが強敵だが、比較的、組み合わせに恵まれたとも言える。組み合わせが決まった瞬間、選手たちに笑顔が浮かんだ。
試合は4チームによるリーグ戦を最初に行い、その後、各組の上位2チームと下位2チームを集めて、それぞれ順位決定戦を行う。試合はシングルス2ポイント、ダブルス1ポイントによって争われる。初日の日本チームは、男子がオーストラリアと、女子がオランダと対戦することになった。
大会初日:女子【ジュニア・フェドカップ】
初日早々、日本女子チームは大きなアクシデントに見舞われた。オランダ戦の試合前の練習で、伊藤絵美子が右足首をねんざしてしまったのだ。くるぶしの周囲は腫れあがり、痛みもあるという。重度ではないが、少なくとも今日の出場は不可能だ。岩本功監督は、オランダ戦では伊藤をダブルスで起用するつもりでいた。森田あゆみと伊藤が組むダブルスは、地域予選でも確実に勝ち星を上げた、ポイントの計算できるペア。しかし、今日ばかりは、世界大会から新しくメンバーに加わった瀬間詠里花と森田の二人で単複3試合を戦うことになった。
その瀬間が、第2シングルスとして第1試合に登場した。瀬間は序盤から積極的に攻撃を繰り出した。ポイントを挙げるたびに声を出して、自分を勇気づけた。好スタートで2-0としたものの、次第にミスが増えていく。「やはり緊張していたのだろう。攻め急ぐところがあった」と岩本監督。相手の選手は次第にサーブが当たりだし、瀬間は逆転を許し、最後まで主導権を握ることができなかった。3-6、3-6のスコアで、日本チームは第1試合を失った。
続く第2試合には、エースの森田が登場した。森田のテニスは圧巻だった。常に攻撃を仕掛けるのは森田。相手のオランダ選手は、懸命に走って、森田の強打を拾うだけだった。たちまち森田が5-2とリード。しかし、ここから相手の粘りが実を結び始めた。森田のハードヒットにも少しずつミスが増えてきた。あと1ゲームが取りきれず、結局タイブレークに。タイブレークもいきなり0-4の劣勢。しかし森田の集中力がここで一気に高まった。激しく追い上げ、タイブレークは8-6、第1セットを森田が制した。
第2セットは第7ゲームで森田がブレークに成功し、4-3。勝負どころを押さえた森田が、そのまま6-4で押し切った。スコアのうえでは相手に追い上げられての逃げ切り勝ちだが、森田はまったく危なげなかった。常にゲームをコントロールしていたのは森田だった。岩本監督も「何も言うことはない。自分の考え、目的を持ってプレーしている」と絶賛。エースへの信頼感はさらに増しただろう。1990年3月生まれ、14歳の森田は、「飛び級」で出場した16歳以下の大会で大きな存在感を示した。
1勝1敗となり、勝負はダブルスにかかった。しかし、岩本監督の不安が的中してしまう。二人のプレーが噛み合わない。二人ともダブルスの技量は決して低くない。惜しまれるのは、このペアでの実戦経験のなさ。互いの動きを予測できず、二人でボールを見送るシーンもあった。3-6、0-6の完敗だった。「組み慣れていないなか、よく戦ってはいたが、思っていた以上に残念なスコアだった」と岩本監督。これで、オランダ戦の敗戦が決まった。
明日はクロアチア戦。岩本監督は「今日の相手よりもう少し強いので、二人に頑張ってもらうしかない」と森田、瀬間に命運を託す。
森田が伊藤に肩を貸し、瀬間は自分のバッグを背中に伊藤のバッグを胸にかかえるという姿で、選手たちは会場をあとにした。伊藤のねんざは、しばらく経過を見ることになるが、今後も万全な状態での出場は難しいようだ。「ダブルスも残念ですが、コーチから、相手によってはシングルス2として試合に出すかもしれないと言われていたので…」と、あきらめきれない様子。1日も早い回復を祈りたい。
大会初日:男子【ジュニア・デビスカップ】
男子代表のうち、喜多文明と錦織圭は去年のワールドジュニア(14歳以下の国別対抗戦)の主要メンバー。同大会で、日本チームは準優勝という快挙を成し遂げた。世界で結果を出した二人が、今年はどんな戦いを見せるか。試合前から期待で胸が高鳴った。また、富田玄輝を含めた3人は、現在、アメリカにテニス留学中。彼らは、その修業の成果をこの大きな舞台で披露してくれるものと思っていた。
初日の試合を終えた今、私の率直な感想は「まだまだ、こんなものじゃないはずだ!」。
第2シングルスとして第1試合に登場したのは喜多。去年、14歳の喜多は、14歳以下と16歳以下の日本代表に同時に選出された。16歳以下ではアジア/オセアニア予選で敗退したものの、村上武資監督は「ガッツを出して戦う選手。プレーヤーとして大切なものを持っている」と喜多の実戦での強さを感じとっていた。その印象は今年の地域予選でさらに強くなった。そこで村上監督は、練習ではあまり調子がよくなかった喜多に斬り込み隊長を任せたのだ。
今日も、彼らしさの片鱗は見せた。しかし、この日の喜多は、別のもろい一面も見せた。完全に相手を崩しながら、最後のボレーが甘い。スマッシュミスも目立った。勝負どころを一つ一つ制していくのが喜多のよさなのに、この日は逆だった。スコアは5-7、3-6。喜多にとっては不完全燃焼の試合だったろう。
「攻め込んでネットに出て、スマッシュミス。相手は何もしていない。パスはほとんど抜かれていないんです。喜多のほうに、相手に隙を見せるようなプレーがたくさんあった。もう少し、1ポイントに対する執念がほしかった」と村上監督の印象も手厳しい。
おそらく今の喜多は、大人のテニスに脱皮したくて、まだできない状態なのだろう。ショットの威力は確かに増した。しかし、持ち味である相手との駆け引きとか勝負勘が、この試合では影を潜めていた。課題と言われていた攻撃力のアップと引き替えに、そんな持ち味を忘れているのだろうか。おそらく、若い選手は、こうやって行きつ戻りつしながら成長していくのだとは思うけれど。大人のテニスにどう脱皮していくか。世界中の、しかもほとんどが年上の強敵と戦うこの大会は、そのきっかけを作るにはうってつけだろう。
第2試合、錦織(にしこり)圭とオーストラリアのビッグサーバー、スティーブン・ゴーとのエース対決は白熱した。第1セットを2-6で落とした錦織だが、第2セットは互角の展開。4-5で迎えた錦織のサービスゲームでは、2本のマッチポイントを切り抜けた。タイブレークも、マッチポイントを1本しのいだ錦織が、9-7で奪う。ゴーは、くやしさのあまり、ラケットをベンチに投げつけた。
問題はここからだ。第3セットの第1ゲームでブレークを許した錦織は、すぐにブレークバックするものの、第3ゲームでも再びブレークされ、この劣勢を最後まで挽回できなかった。スコアは2-6、7-6(7)、4-6。これでオーストラリアの2-0となった。
「第3セットの始めのところで、もっと足を動かしてやっていけばよかった」と錦織。「自分では気を抜いたつもりはない」と言うが、気落ちした相手につけ込むべきところで、逆に隙を見せてしまった。その意味では、喜多の負け方とやや似ている。ただ、村上監督は、このペースダウンの原因の多くはフィジカル面にあると見ており、錦織本人も、体力面の影響が「少しあった」と話している。クレーコートということもあって、1ポイントを取るまでに多くの労力を使ったはず。その疲労の蓄積が、持ち前の勝負勘を鈍らせたのだろう。フィジカル面もまた、大人に脱皮していくために乗り越えるべき課題である。
喜多と富田玄輝のペアで出場したダブルスも、6-7(4)、3-6とストレートで決着がついてしまった。オーストラリア戦は、0-3という苦い結果に終わった。明日の日本チームは、第2シードの強豪、地元のスペインチームに挑む。
大会2日目:男子【ジュニア・デビスカップ】
| ダブルス |
| ◎ |
Garrapiz/
Robert Bautista |
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VS |
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大会2日目:女子【ジュニア・フェドカップ】
素晴らしい試合に理屈はいらない。見る者の心が動かされる試合、見ていて勇気づけられるような試合が、いい試合なのだと思う。今日はそういう試合が二つも見られた。
まずは、女子の森田あゆみ。クロアチアのアンチッチ(男子のトッププレーヤーであるマリオは実兄)を圧倒しての勝利には、正直、驚かされた。序盤の数ゲームこそ、サーブのリズムが悪く、ストロークのミスも早かったが、その後の森田のプレーはまさに圧巻だった。両サイド両手打ちのストロークは終始、相手を守勢に回した。しかも、3本でも4本でも、ポイントが決着するまで、その強打を打ち続けることができる。この攻撃力と安定感は、大会随一と言っても言い過ぎではないかもしれない。6-2、6-2のスコア通りの圧勝だった。
普段は、杉山愛のホームコートでもあるパーム・インターナショナル・テニスアカデミーで腕を磨く森田。今季はジャパンオープン・ジュニア準優勝、全日本ジュニア18歳以下優勝の成績を挙げ、14歳にして国内トップに躍り出た。国際テニス連盟(ITF)の世界ランキングも順調に上がり、全米オープンに初出場を果たしている。コートを離れ、チームメイトの伊藤絵美子や瀬間詠里花と話す姿は、ごく普通の14歳。しかし、試合中の落ち着きとショットに潜む「キラー・インスティンクト」(一流選手に必要とされる“殺人者の本能”)は、世界のトップジュニアに引けを取らない。
森田の名前とともに、もう一人、「錦織圭(にしこり・けい)」の名前も、ぜひ記憶していただきたい。89年12月生まれの14歳。彼も森田と同様に、飛び級で16歳以下の大会に出場している選手である。本人はまったく意識していないというが、男子ではこの大会の最年少選手だ。その14歳が、われわれの胸を打つ試合を見せてくれた。
錦織の対戦相手は第2シード、スペインのエース、ペレ。つまり、この年代では世界のトップクラスと見て間違いない。その選手を、錦織は正々堂々、正面から寄り切った。第1セットは、錦織の目の覚めるようなショットがさく裂した。特にフォアハンドの破壊力は、これまでの日本選手には見られないものだった。第2セットは相手の堅実さが上回り、セットオールとなった。勝負の第3セット。錦織の体の切れは、わずかに鈍っていたのだと思う。それでも錦織は攻め続けた。ショットの激しさ、攻撃性は、むしろ第2セットより上がっているように見えた。
相手のペレも、第2セット以降、集中力が高まった。試合は、まさに一進一退。錦織が一度は4-2と引き離したものの、4-4に追いつかれる。第9ゲームではブレークに成功したものの、ブレークバックで5-5。そのあとは6-6、7-7と進行していく。錦織は実によく走った。ショットの威力だけでなく、運動量も相当なものだった。相手の高く弾むトップスピンを、ベースラインのはるか後方まで下がって追いかけ、甘いボールはすかさず高い打点から打ち込んだ。フィジカルで負けたのでは、昨日の二の舞。錦織は昨日の悔いを取り戻そうとでもいうように、力を振り絞った。残り少なくなった体力を、気力で補っていた。
錦織が8-7とリードして迎えた第16ゲーム、とうとうマッチポイントが来た。その1本目。ベンチの村上武資監督から「自分から取りにいけ!」と大きな声が飛んだ。もちろん錦織も、そうすることしか勝利の道はないことを知っていた。最後は、正確にコントロールされたパスが、ネットに詰めたペレをあざ笑うかのように鋭角に決まった。村上監督と握手を交わす錦織の表情に、ようやく笑顔が浮かぶ。彼もまた、殺人者の本能をわれわれの前で披露してくれた。そのプレーは会場にいた関係者の心もとらえたようだ。大会を運営するITFのスタッフも、私を呼び止め、「素晴らしい試合だった」と言葉を掛けてくれた。
錦織、森田の印象的なプレーがあり、第2シングルスやダブルスでも日本チームは健闘したが、チーム全体としては男女とも1-2と、残念な結果に終わった。
男子の富田玄輝は、初めてシングルスに起用された。序盤の打ち合いでは積極的な攻撃で2-1とリード。しかし、しっかり打ったショットがウイナーにならず、逆にそれ以上のクオリティのボールが返ってきた。そうしてラリーが長くなると、少しずつオフバランスになり、ミスが出た。完敗だったが、世界大会での強豪相手の試合は、彼のテニス人生の大きな節目になるだろう。
1勝1敗のタイとしたあとのダブルスには、その富田と、シングルスを終えたばかりの錦織のペアで臨んだ。第1セットは日本ペアがよく食い下がり、互角の展開。しかしタイブレークでは流れを引き寄せることができなかった。ストレート負けという結果だが、内容は緊迫した好試合だった。両チームとも、勝利への意欲を前面に出してよく戦った。
村上監督の試合後の第一声は「悔しい!」。世界をあっと言わせるチャンスだった。大魚は、つり針に掛かっていた。最後のファイトで、それを釣り落としてしまったのだ。
大魚を釣り落としたという意味では、女子も同じだ。クロアチアは大会第4シード。チームの勝利を得られれば、森田の勝利もさらに価値を増したのだが。
第2シングルスの瀬間は、よく攻めたものの、相手の選手はそれ以上に堅実だった。瀬間は粘りも見せたが、やはりテニスにアップダウンがあった。勝利に肉薄したのは、ダブルス。この日も伊藤の出場は不可能で、森田と瀬間のペアで臨んだ。二人は前日とは見違えるようなコンビネーションを見せ、第1セットを先取。しかし、第2セットのタイブレークを取りきることができなかった。
勝負を決める第3セット。しかし、1-1となったところで、森田が肩の違和感を覚え、結局、途中リタイアとなった。シングルスでは問題なかったというが、連戦で疲労がたまったのかもしれない。
国の代表による団体戦だけに、結果がすべてとも言える。しかし、16歳以下の選手はまだ発展途上。男女の日本チームが、これだけ内容のある試合を見せてくれたことは高く評価していいだろう。
この結果、男女とも予選リーグ2敗となった。明日(30日)は男子がフランスと、女子はモロッコと対戦する。
大会3日目:男子【ジュニア・デビスカップ】
初日の喜多文明のプレーは、ふがいないものだった。彼が高い能力を持つ魅力的な選手であるだけに余計、残念だった。第2日スペイン戦、日本チームは錦織圭と富田玄輝で単複とも戦ったため、喜多の出番はなかった。錦織が相手のエースに勝ち、意気上がる日本ベンチで、喜多は仏頂面をしていた。1-1となり、ダブルスに勝負がかかったが、試合直前に喜多はダブルスのメンバーから外されたのだ。それでも喜多は、スタンドで仲間たちに懸命の声援を送った。
その喜多が、今日のフランス戦ではシングルス2として起用された。そして、初日の試合で彼につきつけられた課題に、見事に答えを出した。
相手のフランス選手は、大柄だが、これといった武器はない。その相手に、喜多は積極的に攻撃を繰り出した。第1セットは一時、4-2とリード。しかし、ここから引き離すことができず、逆に4-5と先行される。初日同様、チャンスでの詰めの甘さも顔をのぞかせた。しかし、次の第10ゲームでよく粘り、キープ。さらに2ゲームを連取して、7-5で第1セットを奪った。
第2セットは相手もペースを上げてきたが、喜多は好調なプレーで3-0とリード。ところが喜多は、またもここで失速し、3-2と追い上げられる。嫌な予感がした。しかし、今日の喜多は、初日の喜多ではなかった。ここからショットの質と精度が急に上がった。厳しいボールを何本も打ち込んで、打ち粘った。
肝心な場面で、攻撃性と堅実さが見事に両立していた。喜多は、コート横のフェンスにタオルをぶら下げ、ときには1ポイントごとにそこまで歩いていって汗をぬぐった。そして、大切な場面では、大きな声で自分を励ました。そうやって、彼はコートの上に「文(ふみ)ワールド」を作っていた。こうなると喜多は強い。
3戦目にして初めてシングルス2の選手が勝利を収め、シングルス1の錦織にバトンを渡した。
錦織は、今日も素晴らしい能力を見せてくれた。連日の熱戦、しかも単複で出場している錦織には疲れの色も見えた。肉体的にはぎりぎりの状態だろう。長時間のゲームで少し集中を失ったのか、第2セットと第3セットは序盤にリードを許す。第3セットは、一時0-3となった。しかし、ここから錦織が、ぐんと加速した。
相手のシドレンコは、堅実で鋭いストロークを持っていた。しかし錦織は、ハードヒットの打ち合いで埒があかないと見るとドロップショットやスライスを多用して、相手を翻弄した。ストロークで引けを取らないうえに、プレーの懐の深さで相手を圧倒した。そのセンスと、何としてでもポイントを取ろうという執念が見事だった。
最初のマッチポイント。ここでも錦織はドロップショットを放ち、相手のシドレンコが拾ったボールはサイドラインを大きく割った。日本がこの大会での初勝利を挙げた瞬間だった。
最後のダブルスはフランスが棄権。日本の3-0となり、日本は予選グループ3位で予選リーグを終えた。明日(1日)から順位決定戦となり、日本チームは9~12位決定戦に回る。
大会3日目:女子【ジュニア・フェドカップ】
大会初日に伊藤絵美子が右足首をねんざ、第2日に森田あゆみが肩の故障と、日本女子チームは予期せぬアクシデントに見舞われた。伊藤はテーピングをすれば歩ける状態まで回復したが、試合出場はまだ無理。また、昨日の試合で負傷した森田の肩も試合には耐えられないという判断で、岩本功監督は今日のモロッコ戦の棄権、さらに今後の全対戦の棄権を決めた。女子チームは、明日にも帰国する予定。残念だが、将来ある選手のことを考えれば、この判断は当然だろう。
大会4日目:男子【ジュニア・デビスカップ】
【大会4日目】
【ジュニアデ杯】9~12位決定戦/○台湾 2-1 ●日本
[シングルス2]○李東翰 6-3,6-3 ●喜多文明
[シングルス1]○李欣翰 7-6(7),6-4 ●富田玄輝
[ダブルス] ○錦織圭/富田玄輝 7-5,6-3 ●李東翰/王耀城
世界には、いろいろな選手がいるものだ。メタルフレームのめがねをかけた台湾の李東翰は、どうちらかというと高校の化学部あたりにいそうなタイプ。しかし、この李がなかなかのクセ者だった。高いトップスピンロブを何本でも打ち続け、相手の返球が甘くなったときだけ攻めていく。このハードヒットがかなりのクオリティだった。彼は体は細いのに声だけは野太く、ポイントを取るたびにその声で吠えた。インターハイにいくと、ときどきこういう選手がいるが、インターハイ選手との大きな違いは、この李は強打と高いテクニックを秘めながら、この泥臭い戦い方に徹していたことだ。
もっとも、コートの上に自分の世界を作り出すという点では、喜多文明も負けていない。昨日のフランス戦でもそうだった。小さい頃から、彼はそうやって勝ってきたのだ。台湾戦の第1試合、シングルス2の対戦は、どちらの選手がコートを自分の色に染められるかの戦いだった。
選手たちがかわいそうだったのは、審判の技量が極めて低く、試合中にレフェリーを呼ぶ中断が4度もあったことだ。そんな状況で集中を保つのは誰だって難しい。しかし、台湾の化学部君は、この展開にもまったく動じなかった。ボールを思い切りこすり、大きな声でベンチコーチと会話を交わし、ときどき自分とも会話した。終始、彼のワールドは揺るがなかった。
一方の喜多は、フランス戦のときのような「フミ・ワールド」を作ることができなかった。李のロブ攻撃に攻撃の糸口を見つけられず、アンパイヤのジャッジにも集中を乱され、リズムを作っていくことができなかった。しかし、これもまた「世界」。この苦い経験を生かしてほしい。
続くシングルス1に村上武資監督が起用したのは富田玄輝。これまでエースの役割を任せてきた錦織圭は、連日のマラソンマッチを戦い抜いたツケで、フィジカル的にいっぱいいっぱいの状態だった。また、台湾の李欣翰には地域予選で敗れており、相性の悪さを感じていた。
富田は前回シングルスに起用されたスペイン戦とは見違えるような出来だった。積極性が前面に出て、自分からポイントを取るテニスができていた。相手の李も、強烈なフォアハンドを武器に、不器用だけれど猪突猛進型のテニスを続けた。
勝敗の分かれ目となったのは、第1セットのタイブレークだった。富田はここでも積極的に攻めた。フォアハンドのダウンザラインを決めて、6-3。トリプルセットポイントが来た。しかし、ここからの富田のプレーは少し積極性を欠いていた。村上監督は「取りにいけ」と声援を送るのだが、エキストラのプッシュができなかった。このタイブレークは結局、9-7で台湾が制した。
第2セットも富田は2-4から4-4と追い上げるなど互角に戦ったが、4-5で迎えた第10ゲームでブレークを許し、李に押し切られた。本当なら、ここも富田が自分を最大限にプッシュするべき場面だった。国内の試合ならともかく、こういう国際試合では、大切な場面こそ、それまでにも増して積極的にいかなければ勝ちきることはできない。そのことを、富田は、敗戦の痛みとともに心に刻んだはずだ。
富田にとってよかったのは、そのあとのダブルスで今大会の初勝利を上げたことだ。片目が開けば、次は両目。次回の健闘を期待しよう。
明日の日本チームは、開幕以来初めての休日となり、3日(日)に11、12位決定戦に出場する。
大会最終日:男子【ジュニア・デビスカップ】
| ダブルス |
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VS |
| ● |
Meigel/
Frank Wintermantel |
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富田玄輝と喜多文明がほぼ交互に起用されてきたシングルス2。今日の出番は富田玄輝だった。これまで、シングルスでは勝ち星なし。最初のスペイン戦は、団体戦の緊張感もあって自分のテニスがまたくできなかった。シングルス1で起用された台湾戦は、いいプレーをしながら最後のプッシュができず、苦杯を喫した。肝心のところで気持ちだけ「(ポイントを)取りたい取りたい」になっていて、ポイントを取るためにやるべきことができていない。これが村上武資監督の評価だった。この課題を克服できるか。今日のドイツ戦は富田の正念場だった。
富田は立ち上がり、4-1とリード。相手はミスヒットも多く、富田が圧倒していた。互いにサービスキープで5-2、5-3と進行し、富田のサーブ。ここを取りきれば、第1セットを奪うことができる。しかし、ここから富田は苦しんだ。ダブルフォールトが2つ。それからフォアハンドのイージーミスで、サービスダウン。落とし方がよくない。富田の最初のテストは「落第」だった。
次の第10ゲーム。富田は気持ちを切り替え、ダブルのセットポイントを迎えた。これを富田は1本で決めた。正直、このゲームは相手のミスに助けられた。また、序盤の見事なスタートダッシュに比べれば、最後はよろけながらのゴールインだった。それでもセットを取りきったことに大きな価値がある。富田は2度目のテストで、なんとか合格した。
勢いに乗った富田は第2セットも3-0とリード。ここまでくれば、もう大丈夫。富田の積極的な攻撃と、相手のミスでゲームは淡々と進んだ。4-2からのサービスゲームを逆転でものにし、そのまま最後まで突っ走った。今度こそは、最後までプッシュし続けられた。今大会、シングルスでの富田の初勝利だった。
「スペイン戦は、『取りたい取りたい』だけでした。台湾戦でもそれが少し出て…、でも今日はよかったと思います」と富田。対戦相手の力量は別として、富田は尻上がりに自分の力を発揮していった。発展途上の16歳にとって、大会のなかで課題を見つけ、それにひとまず答えを出したことは大きい。この経験を生かし、現在、拠点にしているアメリカで力をつけてほしい。
ドイツには第8シードがついていたが、今大会、チームは不振。順位決定戦でも初戦のチュニジア戦に敗れ、選手たちのモチベーションは決して高くなかった。そこへきて、第1試合はストレート負け。こうなると、テニス大国ドイツの16歳も、日本の14歳、錦織圭の敵ではなかった。試合は終始、錦織ペース。ハードヒットにドロップショット、さらにサーブ・アンド・ボレーまでまじえ、錦織が相手を圧倒した。
最終試合のダブルス。喜多と錦織の反省点は、士気の落ちている相手にわざわざ手を差し伸べて、生き返らせてしまったことだ。それでも、第2セットを粘って奪い、最後も6-2と押し切ったことは評価していいだろう。最終戦は3-0で、日本チームが有終の美を飾った。
これで全日程が終了。日本は11位となった。去年、14歳以下(ワールドジュニア)で準優勝したことを思えば、大騒ぎするような成績ではないが、内容には見るべきものがあった。なかでも、優勝したスペインのエースに大会最年少の錦織が競り勝ったことは、大きな収穫だった。錦織と喜多は、来年もこの大会の出場資格がある。それを知る大会役員は村上監督に「来年が楽しみなチームだね」と言葉を掛けた。これは決して社交辞令ではないだろう。
女子(ジュニア・フェド杯)の日本代表は、2選手の負傷で大会途中に棄権、16チーム中最下位という結果に終わったが、森田あゆみはシングルスで全勝。3位のオランダのエースに勝つなど、ワールドクラスの選手であることを証明した。今大会の女子選手は、全体的に小粒だったが、その中にあって、森田のプレーは鮮烈だった。
なお、ジュニア・デ杯の準優勝はチェコ。ジュニア・フェド杯の優勝はアルゼンチン、準優勝はカナダだった。
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