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JTAレポート:彩夏到来08埼玉総体レポート

[更新日:2008/09/02]

「限界を超え飛びたつ君よ永遠の風になれ」

全国高等学校体育連盟テニス部
常任委員 新居弘行

はじめに

「限界を超え飛びたつ君よ永遠の風になれ」をキャッチフレーズに、青春の感動と笑顔と涙のドラマ、今年のインターハイが埼玉の地で展開された。

大会スローガンの彩夏到来(さいかとうらい)は、「高校生が自らの才能を彩(あざ)やかに開

花させ、それぞれの夏に彩りを添えて欲しい。」という意味である。この簡潔なメッセージにインターハイに向けられたすべての思いが託されていると感じた。

さて、”雲一つない快晴”は何とか避けられたものの、今年も連日36度を超えるじめじめした暑さの中でのインターハイとなった。健康管理が求められる中、選手とともに補助員の活躍も目立った。審判員、記録係、撮影係、駐車場係、弁当サンプリング係・・・等、計22枚の頼もしい花びらも大会に花を添えた。

開会式

開会式はさいたま市民会館大宮大ホールで開催された。

会場は、開始通告前の浦和高校グリークラブの調和のとれた男声合唱で一つとなり、さらに開会式後の同校応援団による選手激励には拍手喝采。翌日からの戦いの大きな励みとなった。

秀明英光高校男子川崎主将、女子鈴木主将の宣誓の内容。「悲しい出来事は多くありますが、私たちは今日こうして全国の仲間を迎えテニスを通して力一杯競えあえる幸せをかみしめながら宣誓します。」「彩り豊かな埼玉の地で、私たちをはぐくんでくれた両親や宣誓に感謝し、最後まで全力でプレーしさわやかな感動を皆さんに与えられるよう戦うことを誓います。」

万雷の拍手の下、インターハイの幕は切って落とされた。

団体戦

男子ベスト8は次の学校。

湘南工大附(神奈川)・浦和学院(埼玉)・東海大菅生(東京)・長尾谷(大阪)・東京学館浦安(千葉)・柳川(福岡)・龍谷(佐賀)・秀明英光(埼玉)。

関東5校のうち、さらに湘南工大附・浦和学院・東海大菅生の3校が準決勝に進んだ。昨年に続き関東勢の躍進が目立つ大会となった。地元の秀明英光・浦和学院はともにノーシードからベスト8に入り、地元の期待に応えた。

第1シードの湘南工大附と、3回戦で第4シードの四日市工業(三重)を破り勝ち進んだ東海大菅生との準決勝は、ダブルスが湘南工大附の快勝。シングル1は息の詰まる戦いとなったが、安定感のある湘南工大附・守谷が追いすがる東海大菅生・竹島を振り切った。

もう一つの準決勝第2シード龍谷と東京学館浦安戦はシングルス1、2がタフな試合となったがともに龍谷が制し、ダブルスと合わせ3-0で決勝に駒を進めた。

湘南工大附と龍谷の決勝戦は、37度を超える炎天の下3面展開で開始された。ダブルス、湘南工大附・田川は鋭い読みでポーチを決め、ペアの只木の緩急をつけたショットと合わせ点差を広げ、6-3,6-1で快勝した。シングルス1の湘南工大附・守屋対龍谷・廣田は守屋が攻守にバランスのとれたプレーを見せ、1stセットみるみるうちに6-1とした。2ndセットも危なげなく6-3でとり湘南工大附が2連覇を達成した。

女子ベスト8は次の学校。

駿台甲英(兵庫)・長尾谷(大阪)・椙山女学園(愛知)・湘南工大附(神奈川)・

松商学園(長野)・藤代(茨城)・富士見丘(東京)・仁愛女子(福井)。

近畿2校、関東3校、北信越2校、東海1校となり、近年には珍しく九州勢の姿が消えた。また第1〜4シードのうち、準決勝まで進んだのは仁愛女子だけであり、このことからも上位の学校の力が接近していることがわかる。特に藤代はノーシードから準決勝まで駒を進め、昨年(ノーシードからベスト8)に引き続き本番に強いことを証明した。ベスト4の監督すべてが女性であった。

第1シード駿台甲英(兵庫)を準々決勝で破った長尾谷と、2回戦で第2シードの栗東(滋賀)を破り勝ち進んだ湘南工大附が準決勝で対決した。シングルス1は長尾谷、シングルス2はファイナルセットまでもつれ湘工大附。勝敗の行方はダブルス対決に持ち込まれた。湘南工大附はペアそれぞれのテクニックを駆使してポイントを取ろうとしたのに対し、長尾谷ペアはペア二人のコンビネーションで得点を重ね、最終的に長尾谷のコンビネーションが湘南工大附を上回った。第2シード仁愛女子とノーシードから勝ち上がっていた藤代との準決勝は、全国大会の経験で上回る仁愛女子が、藤代を寄せ付けず完勝した。

決勝戦は長尾谷と仁愛女子。シングルス1は長尾谷の小城選手が粘る菅村選手を振り切りまず1ポイント,シングルス2は仁愛の井上愛選手が3年生の意地を見せ勝利し,1-1。ダブルスはセット毎に流れが変わる展開。1stセットは長尾谷,2ndセットは仁愛。ファイナルセット仁愛・中村の思い切りのよい大胆なポーチも光ったが波に乗りきれず、長尾谷・小関・佐藤の多彩な攻めの前に涙をのんだ。長尾谷は3年連続3回目の優勝。小城は3年間シングルス1としてこの3連覇に貢献したことを特記しておく。

個人戦・シングルス

男子シングルスベスト8は次の選手。丸数字は学年。

廣田耕作③(龍谷)・前田義明③(鳳凰)・竹島駿朗③(東海大菅生)・遠藤豪②(四日市工)・綿貫裕介③(堀越)・石井靖晃③(龍谷)・星野武蔵③(東京学館浦安)・守屋宏紀③(湘南工大附)

関東4名、九州3名、東海1名、という結果となった。

優勝したのは守屋宏紀(湘南工大附)。団体・ダブルスと合わせ3冠達成である。前回の3冠は10年以上前にさかのぼり、平成8年度、甲府インターハイでの岩見亮(渋谷幕張)選手以来である。

決勝戦は団体戦決勝(シングルス1)と同じ対戦、第1シードの廣田耕作(龍谷)対第2シードの守屋宏紀となった。パワフルな廣田に対して、守屋はコンパクトに打ち返し、また振られてもコートからはじき出されないバランスの良いテニスで、始終ゲーム数でリードされることなく優位に試合を進め栄冠を勝ち取った。廣田は第1セット1-4から4-5まで食い下がるが届かず、第2セットも第5ゲームのブレイクを許してしまい、涙をのんだ。

準決勝には第3シード綿貫裕介(堀越)、第4シード遠藤豪(四日市工)ら上位4シードがそろった。特に遠藤は廣田に対しファイナルセット5-2とし、マッチポイントも握ったが、逆転を許した。彼はまだ2年生。今後に期待したい。

女子シングルスのベスト8は次の選手。

小城千菜美③(長尾谷)・石津幸恵①(土浦日大)・山下ちなみ②(札幌日大)・大竹志歩③(富士見丘)・古賀愛②(駿台甲英)・伊従智子③(早稲田実業)・桑田寛子③(早稲田実業)・井上雅②(椙山女学園)

関東4名、近畿2名、東海1名、北海道1名。昨年はベスト8に一人も入らなかった関東が勢力を盛り返す形となった。

優勝は小城千菜美(長尾谷)。一昨年はベスト4、去年は準優勝。今年は悲願の初優勝である。決勝戦は小城(長尾谷)対井上(椙山女学園)の顔合わせとなった。スタンドを埋め尽くした観衆の視線の中、4番コート、9時35分に試合は始まった。1stセットは6-0で小城。スコアほど一方的な内容でなく、井上も各ゲーム30まで取るが、その後が続かない。井上に少し緊張が見られたのに対し、小城は落ち着いた様子。2ndセット、井上は力強いショットを決めるが、単発に終わることが多く、一方小城は強打に力を抜いたショートクロスを時折混ぜ、徐々に差を広げていく。第7ゲーム6度のデュースをものにし、5-2。その後5-3、6-3で押し切った。

小城は4回戦まですべて8-0、その後の決勝戦を含めた3試合もそれぞれ失ゲーム数3であった。圧勝といってよいだろう。その数字と、優勝が決まった後しばらくベースライン上で感涙に浸っていた姿が、彼女のこの大会にかける思いの強さを物語っていた。

伊従、桑田の早稲田実業勢がそろってベスト8に入った。小気味のいいショットが持ち味の石津(土浦日大)は1年生ながらノーシードからベスト8。将来に期待したい。

個人戦・ダブルス

男子ダブルスベスト4は次の選手。

守屋宏紀③・渡辺輝史③(湘南工大附)、星野武蔵③・増尾優太郎③(東京学館浦安)、月村隼人③・山﨑宏昭③(長尾谷)、廣田耕作③・石井靖晃③(龍谷)

関東2組、九州1組、近畿1組である。栄冠を勝ち取ったのは守屋宏紀・渡辺輝史(湘南工大附)ペア。午前中シングルス決勝で戦った2人の対決がダブルス決勝でも実現した。ファーストセット6-2で守屋・渡辺。セカンドセットは一進一退の緊迫した攻防が続き、廣田・石井が5-4の30-15までリードしたが押し切れず、7-5で守屋・渡辺が制した。

女子ダブルスベスト4は次の通り。

小城千菜美③・小関みちか②(長尾谷)、岩崎舞③・坂東未来③(栗東)、松島美智留③・広瀬杏菜③(園田学園)、安井仁美③・青木香奈③(華頂女子)。

すべて近畿であり、今年も近畿のダブルスは強く洗練されていた。

決勝戦は岩崎・坂東(栗東)対松島・広瀬(園田学園)。1stセット2-5から5ゲーム連取して松島・広瀬。2ndセットも松島・広瀬が0-3から3-3に追いつきそのままタイブレイクに。試合の流れは松島・広瀬かと思われたが岩崎・坂東(栗東)が踏ん張りファイナルセットへ。ファイナルセット、スコア上は一進一退の攻防となったが、ポーチの数が栗東8、園田5。前衛のサイドを抜いて取ったポイント数が栗東8、園田2、という数字からわかるように、栗東が積極的に仕掛け、かつ読みでも園田を上回り3時間35分の熱戦に終止符を打った。岩崎・坂東(栗東)は初優勝。

小城・小関(長尾谷)、安井・青木(華頂女子)ペアはともに準決勝ではファイナルセットまでもつれる接戦を演じたが、あと一歩及ばなかった。

おわりに

連日36℃をこえる猛暑の中、高校生たちの熱い戦いは終わった。

毎年繰り返される激しい戦いとともに、年々育まれていることもある。まず、開会式での畑レフェリーからの呼び掛けに応じ、試合後選手と審判との握手が至る所で見られた。これはプロの試合ではよくあることだが、今までのIHではあまりなかったことである。敗戦後、相手チームに「よかったら使ってください」と氷を贈ったチームもあった。テニス仲間同士、小さな心と心の交流が年々増えてきていることをうれしく思う。

入場者数は7日間で延べ25000人を超えた。特に団体準決勝・決勝戦のあった8月4日は延べ約5300人が押し寄せた。リアルタイムでの動画配信もあり、大宮会場の1番コートの試合がネット配信された。実況付きの配信は初めての試みであり、ユーモアを交えながらの解説は視聴者からの反応も良かった。

「ほっとした。日を重ねるごとに落ち着いてできるようになった。緊張はしなかった。」「1年間審判講習会が何度もあり、それを発表する場がIHだった。何か文化祭が終わってしまったような寂しい気がする」「最後の試合、しかも守屋君の3連覇がかかっている。緊張したが試合にはいると集中できた。」「3時間30分の試合時間だったが役員の先生がファイナルセットにはいるとき『ラスト1セットがんばれ』と声をかけてくれてうれしかった。」審判員のコメントである。彼らをはじめ800人を超える補助員たちも連日がんばった。

光はものに当たるとそれを輝かせることができるが、光自体は見えない(暗い真空中を進む光を想像して欲しい)。補助員はそれに似た存在だと思う。つまり目立たないが、大会を盛り上げる補助員の存在があって初めて選手は輝くことができるのである。しかし、”光と補助員の違い”も一つある。それは補助員たち自身も、選手を輝かせつつ自分たちも全く同等に、埼玉インターハイに出場している高校生として輝いていた、ということである。きっとテニスの神様は彼らにご褒美として”人のためにがんばることの尊さ”をプレゼントしてくれたことであろう。

畑レフェリーをはじめとする埼玉県高体連テニス部の皆さんの、細やかな気配りの行き届いた大会運営に心より感謝申し上げレポートを締めくくりたい。



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