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JTAレポート:第30回全国選抜高校テニス大会

[更新日:2008/04/14]

全国高等学校体育連盟テニス部
副部長 沢野 唯志

開会式

「この青空は君たちのためにある。」古賀通生大会会長の言葉である。博多の森テニス競技場センターコートから見上げると、全国選抜の開会を祝福するかのように紺碧の空が広がり、彼方には白い飛行機雲が長く尾を引いていた。

全国の地区大会を勝ち抜いた男女各50校の計100チームが堂々の入場行進を行う。キャプテンはプラカードに導かれてセンターコートに集合し、メンバーたちはカラフルなウエアに身を包み観覧席に整列する。今年は、白を基調にしたパステルカラーが多いように思われる。色鮮やかなお花畑が突然出現したかのような驚きと感動が博多の森を包む。

渡辺康二日本テニス協会専務理事は次のようなメッセージを参加選手に贈った。「選抜大会をステップにして多くの選手が世界に羽ばたいていった。今、日本のテニス界は1990年前後2年生まれの選手たちが支えている。君たちの中から新たなヒーロー・ヒロインの誕生を期待する。」

ドリーム枠で出場の八幡南・石川美月主将が「チームメートとの絆を信じ、伝統ある第30回記念大会にふさわしいプレーをします。」と力強く選手宣誓した。

今大会の組み合わせは、センターコートでのキャプテンによる公開抽選によって決定された。対戦校が決まるたびに大きなどよめきと歓声が起こり、決戦前夜の盛り上がりは最高潮に達した。

開会式の入場行進の演奏を務めたのは九州女子高吹奏楽部。また、同高津軽三味線部と福岡大学大濠高校応援指導部が歓迎アトラクションに参加した。このように、全国選抜は多くの高校生の支えによって成立している。


新たな取り組み

第30回大会を契機に、全国のテニス部に所属する11万人のテニス部員が社会貢献活動に参加するという観点から、「ピンクリボン運動」をスタートすることを決定した。ピンクリボンとは、乳がんの早期発見・早期治療の大切さを伝えるシンボルマークのことであり、会場ではロゴ入りTシャツを販売してその収益の一部を患者の支援団体に贈る活動を開始した。

高校テニス界の精鋭たちが集うSENBATSUから乳がんの早期発見を呼びかけるという運動は今後の高校スポーツ界に意義ある問題を提起したものであると思われる。

また、メイン会場である博多の森テニス競技場前のディスプレイが一新された。美しい花が咲き誇る正面入り口に向かって意匠を凝らしたメーカーのブースが立ち並び、今回から博多の名産品・豚汁・うどんのコーナーも出店された。青と白のパラソルの下にはカフェテラスもあり、USオープンさながらの雰囲気となったのである。SENBATSUが福岡へ移って5年、着実に地域と密着した大会になりつつあるということが実感される


団体戦

男子ベスト8に進出した学校は次の通り。

明石城西(兵庫)・鳳凰(鹿児島)・足利工大付属(栃木)・湘南工大付属(神奈川)・柳川(福岡)東海大菅生(東京)・長尾谷(大阪)・名古屋(愛知)

関東3校・近畿2校・九州2校・東海1校という結果であり、シード校が順当に勝ちあがってベスト4を占めた。

明石城西と湘南工大付属の準決勝は地力で勝る湘南工大付属が3-0で快勝した。勝負を決めたのはシングルス1の渡辺、気迫あふれるプレーで大崎をフルセットの末に振り切った。敗れたものの明石城西はシードとしての責任を見事に果たし、存在感があった。

もう一方の準決勝、柳川対名古屋の戦いはシングルス3本を取った柳川が競り勝った。

特に、今大会初めてシングルス3に出場した松沼は重圧をはね返してストレート勝ちしたのは見事であった。ダブルス1を7-6・6-2で完勝した名古屋は、よく鍛えられた好チームであった。

16度目の頂点に立ったのは柳川。絶対的エースがいた昨年度とは違い、メンバー全員がそれぞれの役割を果たし、まさに総合力で栄冠を勝ち取ったということができる。「目と目を合わせると気持ちが通じる」との本田監督の言葉がすべてを語っている。

決勝戦のポイントはシングルス1の勝敗の行方であった。柳川の塩田はファイナルセット0-3から逆転勝利をあげ、柳川のナンバー1として、伝統に支えられた責任を果たした。また、ダブルス1が競り勝って流れを引き寄せたのも大きかった。

湘南工大付属はエース渡辺を中心に、十分優勝をねらえる力を持っていた。決勝戦ではシングルス3に持ち込んで勝負をかけたいところであったろうが、キャプテン只木の出番がなかったことが悔やまれる結果となった。インターハイでは捲土重来を期待したい。

女子のベスト8は次の学校。

柳川(福岡)・椙山女学園(愛知)・県岐阜商(岐阜)・長尾谷(大阪)・仁愛女子(福井)・松商学園(長野)華頂女子(京都)園田学園(兵庫)

近畿3校・北信越2校・東海2校・九州1校という結果となった。関東勢がベスト8に残らなかったのは意外であるが、確実に地域の実力の分散化が進んでいることが証明された。

準決勝、柳川と長尾谷のポイントは3-0であったが試合内容は互角であった。特にダブルス1とシングルス2はファイナルセットまでもつれ込んだが、地力に勝る長尾谷が競り勝った。柳川は1年生中心のチームながら一戦一戦力を付け、厳しいゾーンを勝ち抜いてシードを守ったのは立派であった。

仁愛女子と園田学園の準決勝は今大会屈指の好勝負であった。シングルス1は園田、松島、シングルス2・3は仁愛、井上(愛)・井上(晴)が取り、王手を掛けた仁愛が有利かと思われたが、ダブルスの2ポイントはいずれもファイナルセットまでもつれる大接戦となった。そしてこのダブルスに競り勝ったのは園田学園。最終のスコアはきしくも両方とも6-4であり、園田学園の伝統と精神力の強さが光った。

仁愛女子は強豪校の誇りを持って最後まであきらめない姿勢を堅持し、今年も鮮烈な印象を残して博多を後にした。

決勝戦は長尾谷対園田学園という近畿対決となった。手の内を知り尽くしている両者であるが、動いたのは園田。ダブルスを取りに行くオーダー変更の作戦が功を奏したかに見えたが、長尾谷はシングルスを3本堅実に取って見事3連覇を達成した。絶対的エース小城の存在が長尾谷の層の厚さを更に盤石にし、堂々の勝利であった。

シード校早稲田実業は古豪園田学園の前に涙をのみ、早々と姿を消したのは残念であった。

表彰式で優勝旗を手渡された盛田正明会長は次の言葉を選手に贈った。「団体戦は、チームのため、母校の名誉のために自己の最大限の力を傾注するという素晴らしい感動を与えてくれる。このスピリッツは将来の君たちの役に立つに違いない。選抜大会を通じて『人間力』を育てていただきたい。」


個人戦

「USオープンジュニア」派遣選手を決める個人戦も5年目を迎え、SENBATSUのもう一つのビックイベントとして定着してきた。今年も、団体戦2回戦に進出したチームの登録NO1選手が九州国際テニスクラブのハードコートでハイレベルの戦いを展開した。 男子ベスト6は次の選手。

渡辺輝史(湘南工大付属)・賀川雄太(鳳凰)・廣田耕作(龍谷)・加藤大地(鈴鹿)・竹島駿朗(東海大菅生)・塩田裕司(柳川)。

優勝したのは廣田耕作。竹島駿朗との決勝戦は6-3、6-3と安定した試合運びで、昨年準優勝に終わった悔しさを晴らしての栄冠となった。山場は2セット2-3からの第6ゲーム。廣田はよく耐えて竹島のサービスゲームをブレークした。これで波に乗った廣田はサウスポーからの強烈なサーブとフォアハンドを小気味よく決め、4ゲームを連取しストレートで勝利した。

昨年度の決勝戦は、柳川の片山に完敗したが、この1年間で技術的にも精神的にも大きく成長し、名実ともに高校テニス界を代表する選手となったことを示した。廣田には更なる高みを目指して世界に飛躍することを期待したい。

竹島はしなやかなフォームから攻撃手なテニスを展開して将来性豊かな選手であることを証明した。賀川・加藤は気迫あふれるプレーで大会を盛り上げ、特に加藤の強烈なサーブは大器としての片鱗をアピ―ルした。

女子ベスト6は次の通り。

小城千菜美(長尾谷)・井上 雅(椙山女学園)・桑田寛子(早稲田実業)・大竹志歩(富士見丘)・阿部 遙(松商学園)・松島美智留(園田学園)。

決勝戦は昨年度と同じ小城千菜美と大竹志歩の対決となった。序盤は小城のサーブが不調で競り合いとなったが、徐々に落ち着きを取り戻して6-3、6-2の完勝となった。これで、小城は団体個人「2冠連覇」を達成した。SENBATSUは2回しか出場機会が与えられていないので、これはまさに偉業というべきであろう。小城はUSオープンジュニアに向けてこのように語る。「今年は本戦に上がりたい。そのために、もっとサーブを強化したい。」

大竹は個人戦2回戦から登場し、順調に決勝戦まで勝ち進んだ。攻撃的でスケールの大きなテニスは魅力的であるが、昨年の雪辱はならなかった。しかし着実にレベルアップしており、その成長を注目したい選手である。

井上は優勝候補の一角として注目されたが、小城の牙城を崩すことはならなかった。松島の安定感、桑田・阿部のテンポのよい攻撃的なテニスも目立った。


終わりに

「大会の審判、補助員を努めてくださる福岡県高体連テニス部のみなさんに対して、常に敬意と感謝の気持ちを抱いてプレーして欲しい。」と訴え続けてきた。

全国選抜大会の熱戦の舞台を支えるのは地元の高校生である。特に福岡県内27校、約500人にものぼるテニス部員が団体戦の審判、補助員として早朝から最終試合まで運営に携わっている。また、個人戦では発足当時(26回大会)より折尾愛真高校に補助員をお願いし、審判は女子連・学連の皆さんに務めていただいている。そのきびきびとした、統制のとれた行動は全国選抜を30年間支え続けたのである。SENBATSUは選手と地元高校生との心の交流の場でもある。

個人戦の表彰式が終わる頃、九州では桜の蕾もほころび、各地で開花の知らせが届くようになった。桜前線はSENBATSUが終わるとともに北上を始める。北の国へと向かう私の乗る最終便から見下ろす博多の町は花曇りに霞んでいるようであった。


第30回大会では団体、柳川・長尾谷、個人、廣田・小城という素晴らしいチャンピオンが誕生した。世界をステージに羽ばたく可能性のある選手たちも多く出現した。と同時に、多くの美しき敗者たちも博多の森を去っていった。団体戦や個人戦で流した彼らの涙は美しいと感じた。


“敗者には美しきもの見ゆるらし涙のあとに感謝のべをり"



“カラフルなスタンドと抽選会"
男子優勝 柳川高校
女子優勝 長尾谷高校
男子優勝 廣田耕作(龍谷)
女子優勝 小城千菜美(長尾谷)