2005イザワクリスマステニスオープンレポート
大会ディレクター 関西テニス協会副会長
佐藤 政廣
第17回目を迎えた「イザワクリスマステニス」。今年のプレーヤーのリストは厚みを増していた。メインドローのカットラインは、全日本テニス選手権よりも高いハードル。実に精鋭ぞろいだ。男子は歴代優勝者の本村、岩渕、添田、松井らをリーダーグループに、女子は浅越、森田、中村、米村の強豪が並んでの激しい戦いが予想通りに展開し、優勝の行方は刻々と変化するほどだった。
どの選手も一年の締めくくりの大会としてはつらつと挑むのは、良いプレーの印象を残して来春のパフォーマンスを心しているのだろう。忘れかけていたスポーツマンシップがいたるところで瞬時であるが発揮された。また、プロたちには身に着けなくてはならないエンターテイメントのマインドも一杯だった。プレーの内容、マナーの発揮、見せ場でのパフォーマンス。これだけ揃えば観客も応えずにはいられない。多くの観客たちが「日本の選手もやるじゃない」と返す。まるで歌舞伎の世界だ。イザワクリスマステニスには本当に花道がある。また、観客席とコートとの間の障壁を取り払い、選手と近くで触れ合えるように配慮したレイアウトにしている。つまり一体感を醸し出したいのだ。
その象徴が最終日に行われる光とミュージックのイベント。暗転した会場の中央からツリーがイルミネーションをまとって降りてくる。歌声が流れ一時のクリスマスムードに包まれたあと、選手の登場になる。ライトアップされた選手たちははにかみながらコートの中央へ。コイントスをすればすぐに緊張が高まる。6.000人以上のワールド記念ホールは期待感の一色に包まれる。嬉しいのは選手に「華」が表出していることだ。これでさらに一体となる。テニスがもたらすダイナミズムではないだろうか。「する」と「みる」が、つまり、Players FirstとRespect Funの融合こそディレクターの使命と思うようになってきた。
さて、ゲームの展開については別途記録をごらんいただくこととし、決勝戦の講評について関西テニス協会の市山哲顧問/元デビスカップ代表選手に寄稿していただいたのでここにご紹介したい。
2005イザワクリスマスオープンテニストーナメント観戦記
関西テニス協会相談役
元デビスカップ代表選手
市山 哲
12月17日(女子ダブルス決勝)
一進一退の接戦となったが、それを制したのは新井・山本組であった。山本が球を作り新井が決めるという、ダブルスのコンビネーションが良かった。特に山本は常に落ち着いてプレーし、ミスも少なく、崩れそうな場面を何度もよく支えた。一方、川床は学校の先輩でありかつわが国を代表する浅越と組んだことで、明らかに固くなっていた。学生のテニスに比べると相手の球にスピードがあることもあり慌てて打つ場面が多く、本来の力を充分発揮できなかったのではないか。それでもパワーと潜在能力を感じさせるショットは随所にあった。今回の試合を契機に是非伸びて欲しい若手のひとりである。浅越は流石と思わせるショットとコートカバリングで観衆をしばしば沸かせた。今年の海外での活躍からショットに余裕とパワーが加わったように感じられた。
12月17日(男子ダブルス決勝)
| ○ |
岩渕聡
岩見亮 |
|
● |
マーク・ニールセン
松井俊英 |
がっぷり組んだ四つ相撲となった。岩渕の洗練されたテニスと岩見の早い動き、これに対する松井とニールセンのパワフルなテニス。4人ともサービスが強く積極的なテニスなのでスリリングな試合展開となった。第1セットはお互いに相手のサービスをワンブレークして6オールのタイブレークとなり、ニールセン・松井組が僅差でこれを制した。第2セットは岩渕・岩見組がほとんどノーミスで相手チームもお手上げ。第3セットに入って、またサービスキープの一進一退の白熱した試合展開となるが、第10ゲーム目のニールセンのサービスを落として岩渕・岩見組が栄冠を手にした。スピーデイーな見ごたえのあるダブルスで観衆も一球一打に歓声を上げていた。
12月18日(女子シングルス決勝)
今日も昨日に引き続いて約6.000人の観衆がドームに詰めかけた。そして選手の一打1打に歓声や溜息の声が上がった。これだけ観衆がテニスに集中してくれると選手もプレーのし甲斐があるであろう。
決勝戦は若手同士の対決となった。第1セット立ち上がりは二人ともやや硬くなり、ダブルフオールトが目立ったがすぐペースを取り戻し、一進一退の試合展開となった。この間、二人の思い切りの良いスピーデイーなラリーと好サービスの応酬はしばしば観衆を沸かせた。6-5と中村がリードして迎えた米村のサービスの時、中村の速くて深いバックハンドストロークが立て続けに入って、第1セットは7-5で中村がものにする。この辺りから、中村のストロークがより深くより正確になり、第2セットに入って米村も必死に抵抗するがかなわず、ついに1-6で中村の軍門に下った。中村は試合後のインタービューを聞いていてもこの一年でずいぶん成長したとの印象を受けた。米村とともに次の日本の女子テニス界を担うべく一層の精進を期待したい。
12月18日(男子シングルス決勝)
○岩渕聡 7-5.6-3 ●松井俊英
両選手とも強力なサービスと早いストロークを有するので、試合はスリリングなものとなった。第1セット、両者ともサービスをキープして試合が進み6-5で岩渕リードの松井のサービス、松井は40-15でポイントを掴むがここから岩渕の思い切ったストロークエースが立て続きに入りついに第1セットは岩渕が取る。第2セットに入っても、同じような試合展開で両者サービスキープのまま4-4、ここで松井のサービスの時、岩渕の絶妙のトップスピンのロブとバックハンドのリターンが決まり岩渕5-4とリード、第10ゲームの岩渕のサービスで、40-15と岩渕、2本のマッチポイントをつかむ。この絶対のピンチから松井は渾身のパッシングショットでジュースに追いつくが、続く岩渕の切れの良いスライスサービスが返せずゲームセット。試合が終わって、白熱した好試合に万雷の拍手が送られた。この二人は一昨年のイザワクリスマスの決勝戦で顔をあわせており、その時は松井が岩渕を破って優勝している。今日の岩渕を見ていると年を重ねるにつれ円熟味とパワーが増し、確実に進歩していると思った。大器晩成型なのであろう。
2005イザワクリスマステニスオープンを終えて
忘れてはならないこと。それは、阪神淡路大震災から10年を迎えたことだ。この一年間、神戸のいたるところでメモリアルイベントが開催され、軋轢の下で逝った人々をしのび、未だなお苦しむ多くの人達を慰めた。大会レセプションでの井澤金属株式会社の井澤武尚社長が当時のことを振り返られた。瞬時にして廃墟をもたらした大震災は私たち関西テニス協会の辰馬龍雄会長をも倒してしまった。テニス協会役員も悲嘆にくれたが、このような時こそスポーツで市民を元気付けよう勇気付けようと、プレイヤーと共にこの大会の継続開催を決意し、共に手を取り合って開催に向けてのあらゆる努力を兵庫県や地元神戸市のバックアップもいただいて実現させ今日までに至る経緯を述べられた。震災直後の「フェニックス神戸」から10年。来春「神戸空港のオープン」。共通する意識は「飛躍」だ。日本のテニス界もそうありたい。
Merry Christmas & Happy New Year !
追記 最終日、シングルス女子決勝が始まる前に、関西テニス協会は最優秀選手賞として浅越しのぶさんを表彰しました。
(大会ディレクター 佐藤政廣)