トーナメントディレクター 佐藤 政廣
残暑の中、涼しい朝風の中で最終日の18歳以下・16歳以下男女・シングルス・ダブルスの決勝戦がスタートした。
本大会は大阪市・靭テニスセンターにおいて固定開催されるようになって4年目となる。将来あるプレイヤーに可能な限り心地よいプレー環境を整えるのが私達大会運営者の責務である。年毎の運営の積み重ねにより僅かかと思うが環境の改善を加えてきた。特に、今年は温暖化の影響により例年以上の暑さが押し寄せていた。しかし、昨日と今日の会場の涼しい風は、お盆休みのおかげの行き交う車やビル群の排熱が無いためであろうか、それとも季節がくれたものかは分からないが、プレー環境での最大のプレゼントである。だから、今日は、力を決勝戦で存分に発揮してもらえたに違いない。各試合の内容も本当に素晴らしいものであった。
18歳以下男子シングルス
18歳以下男子シングルスは、竹内研人君と杉田祐一君の対戦。二人ともそれぞれの持ち味が出ていておもしろい。杉田君の天分的な身体スピードがボールを圧縮し相手コートにビシッと攻めてくる。一方、竹内君は緩急自在にボールを操りだしたのが第一セットの中盤から。竹内君はコートスペースを知り尽くしている。白線で区切られたコートだけでなく、まさしくフェンスに囲まれたすべてのスペースを使うのがうまい。ベースラインのはるか後方からロブでタイムアドバンテージをとる所など彼にしか出来ないものだろう。テニスに絞ったジュニアプレイヤーが多くいる中で、今日までの海外での経験やJOP/JTT大会にチャレンジしてきたことがうまく積み上げられている。彼こそゲームプレイヤーである。パワーやスピードだけでない。これからの数年の活躍を期待したい。
18歳女子シングルス
18歳女子シングルスは、瀬間詠里花さんが井上明里さんにリードされた第一セットから逆転して勝利。セカンドセットの中盤からバックハンドストロークのコントロールに苦しんだ井上さん。瀬間さんがファイトあるプレーで押し切った。昨年のスーパージュニアで見て以来、これから必要とされるメンタル面が強くなった。すぐに次の活躍の成果が願えるのではないだろうか。
16歳以下男子シングルス
16歳以下男子シングルス。最終セット5-4と迫ったロンギ正幸君が、サーブゲームを落として松尾友貴君に勝負は傾いた。この二人。久々にサーブが目立つプレイヤーである。松尾君の一歩進んだサーブ・コントロールが利いての差が出た。しかし、もう少し二人とも重要なポイントでのサーブの正確性と戦略性が求められる。ストロークにおいても同じことを求めたい。
16歳以下女子シングルス
さて、16歳以下女子シングルスであるが、途中何度も苦境にあった山本愛さんが優勝した。高い打点から繰り出すフォアハンドストロークを最後まで打ち切ったところが将来楽しみだ。メンタルも良い。バランスも良い。大澤愛加さんも優勝としたいほどの好プレー。女子の世界は当面明るい兆しが見えてくる。
トーナメント日程の前半、猛暑に包まれた日々で展開された14歳・12歳以下は全員良く戦った。ここまで来れば良い。全員がメダル対象。
14歳以下男子シングルス
14歳以下男子シングルス。江原弘泰君の多彩な攻めが全試合を通り抜けた。どのゲームもアスリートに必要とされるプレーの爽快さが伝わってくる。ただし、サーブにそろそろ力を注いでほしい。対戦した内山君は前日のダブルスに優勝してシングルスにも期待されたが、セカンドセットからの盛り返しに力が欠けた。
「大器晩成」の本来の語源に沿ってすぐに次の強化へ向かってほしい楽しみなプレイヤーだ。
女子シングルス
女子シングルスは、ノーシードから勝ち進んだ井上雅さんと第一シードの古賀愛さんとの戦い。コーナーを突きコートを広く使った古賀さんにカップが届いた。世界ではこの年齢域がデリケートゾーンとされてきたが、それはかつてのこと。重要な強化の年齢域である。さらに一つ一つのプレーに磨きをかけるようコーチにお願いしたい。
そして、12歳以下だ。競技年齢を下げることはテニスの裾野を広くすることに役立つ。しかし、そこでは、まだ、プレイヤーもコーチも家族もゲームの持つ意味が十分に理解できていないようなことをいろいろな場で聞かされる。典型的に聞かされるのは子供に対して、親が「おまえには投資しているのだ」という言葉だ。教育は投資ではない。投資といわれた子供には行き場が無くなる。本大会に参加しているプレイヤーの環境にはそのようなことがないと信じる。スポーツとは、ホイジンガやカイヨワが言う「遊び」の一つである。スポーツの世界で頂点にたどり着いたものがすべて社会での勝利者とは限らないのである。私達テニス協会の関係者は、確かに世界に輝くスタープレイヤーの出現を常に期待している。それ以上に彼等が期待される社会の一員として成長することも望んでいるのだ。
12歳以下男子・女子シングルス
さて、男子シングルスは本藤優君と綿貫敬介君と、女子シングルスは牟田口恵美さんと大前綾希子さんとのトップシード同士の戦いとなった。女子は牟田口さんがWO(棄権)で大前さんが一位になった。コンディショニングを整えてもやはり最近の猛暑の連続では整え切れないものがある。大前さんはフットワークが素早い。気持ちの切り替えも同様だった。そして、守りよりも攻めたほうが、笑顔が多かった。男子は、綿貫君がサーブゲームをうまくとらえて本藤君を振り切った。少し丁寧にボールをとらえたことも勝利につながったと感じた。
ダブルス
文字数の関係からダブルスについては詳細に報告できないが、全ての年齢域で優れたサーブアンドボレーとセンターセオリーがなされている。ダブルスの基本だ。年齢が上がるにつれてスピードとパワーが増してくるのは当然なことだが、18歳のカテゴリーで少し男女とも足踏みしたところがある。さらにダブルスの練習に力を注いでほしい。とかくダブルスは過小評価される。しかし、シングルよりもネットプレーという技巧性と敏捷性が、サーブというパワーが、狭いポイントを狙うというコントロール性が要求される。デビスカップやフェドカップでポイントの分け目はダブルスに掛かることが多い。それよりも、何十年経ってもジュニア時代のパートナーは永遠の友達だ。特に、ジュニア大会に出場した多くの先輩達は日頃の生活の中でふとパートナーのことを家族の一員のように思い起こすと聞く。スポーツは友達作り、だ。
いつも最後になり申し訳なく思うが、本大会を物心共に支えていただいている特別協賛のSRIスポーツ株式会社・株式会社ダンロップスポーツ様、そして、本年度よりサポートいただいた日清紡様には深甚より感謝を申し上げなくてはならない。強化の重要な一貫となっている「南米遠征」が安定して継続実施できるようになった。この遠征はご褒美ではない。中長期的に我が国のテニス界に資する人材の育成を主としている。テニス界の長年の念願が一つ達成されようとしている。
12歳男子シングルス優勝者の綿貫君のチャンピオンスピーチを引用したい。「大会を主催していただいたテニス協会、大会を支援していただいたスポンサーの皆さん、審判員や本部の皆さん、ありがとうございました。そして、コーチ、両親。ありがとうございました。僕はこの大会に優勝したかったのです。優勝できて大変うれしいです。これからももっと練習してうまくなります。」感謝することを常に心に。
プレイヤー、ご家族、先生、コーチの皆さん、スタッフの皆さん、各ブースの企業・ストリンガーの皆さん、靭テニスセンターの皆さん、本当に猛暑の中連続する約2週間、ありがとうございました。
残された夏には全国各地でまだまだ大会が開催されます。このあとにはすぐ「全国中学校テニス選手権大会」がある。健康にくれぐれも留意して新学期を迎えていただきたい。
来年もまた靭テニスセンターで会いましょう。
※全日本ジュニアの結果は下記からご覧ください。
http://www.jta-tennis.or.jp/tournaments/game/alljapan_jr.html
※レポートはメールマガジン【TENNIS FAN】で速報したものです。