新体制になって3カ月。植田ジャパンが早くも実を結んだーー。勝負が決まると中村藍子(フリー)はラケットを投げて喜びを爆発させ、植田実監督と抱き合った。ベンチでタオルを頭からかぶって敗戦に打ちひしがれるセシル・カラタンチェバを横目に、日本チームは「バンザイ」三唱し、喜びを全身で表現した。
エースの森上亜希子(ミキハウス)は「皆さんが後押ししてくれたから勝てた」と4278人の観客に感謝を述べた。その目には涙が浮かんでいた。
大会レポート:毎日新聞 長野宏美
フェドカップ・ワールドグループ2部プレーオフ(入れ替え戦)日本-ブルガリア戦が9~10日、東京・有明コロシアムで開催され、日本が4-1で快勝。グループ残留を決めた。
シングルスで3勝し、ダブルスを待たずに勝負を決めたが、戦前の予想では「ブルガリア優位」の声が高かった。日本は杉山愛(ワコール)と浅越しのぶ(NEC)のトップ2が欠場。世界ランク72位の森上と83位の中村がシングルスに起用された。対するブルガリアはベテランのマグダレナ・マレーバ(37位)と全仏で8強入りした伸び盛りの15歳、カラタンチェバ(48位)を擁し、ランキングでは上回る。ナショナルチームの小浦武志ゼネラルマネジャー(GM)も「シングルスで勝負がつくとは予想外だった。勝つとしてもダブルス勝負になると思っていた」と苦戦を覚悟していた。
初日。先陣を切ったエース森上の逆転勝利が日本を勢いづけた。強烈なバックハンドのクロスを武器にハードヒットを仕掛けるカラタンチェバに「第1セットは明らかに押されていた」という森上だが、第2セットはペースを落とし、スライスや緩いボールを混ぜる作戦に切り替えた。カラタンチェバの弱点であるフォアの低い位置に球を集め、相手のハードヒットと集中力を押さえ込んだ。森上は「自分でもすごく集中しているのが分かった。普通のツアーと違う執着心があって、絶対あきらめてはいけないと食らいついていった。ナンバー1として出場するのは周囲の期待も大きいし、それに応えなければならないと思う。皆の魂がのっている気がする」と振り返った。
この気迫が中村にも伝わった。フェドカップには91年から出場し、世界ランキングも自己最高で4位(96年1月)をつけたことのあるマレーバと互角に勝負。最後は試合巧者のマレーバに軍配が上がったが、善戦で翌日へ期待をつないだ。最終日は再びエース森上が格上のマレーバに快勝。フェドカップでのシングルス通算8勝1敗と「日の丸」を背負うと強い森上の気迫あふれるプレーが中村にも乗り移った。相手の速いテンポに対し、「後ろに下がって守っても後悔する。速いタイミングでプレーしよう」と中村は強気で臨んだ。得意のフォアを軸に攻め続け、第2セットは2-5から逆転。「マッチポイントはどうやって取ったか覚えていない」というほどの集中力で2部残留を決めるフェドカップ初勝利をあげた。
日本テニス協会は今年度から“新制ナショナルチーム”を発足させた。元フェドカップ監督の小浦氏がゼネラルマネジャーを務め、デ杯、フェド杯、ユニバーシアード、ジュニアデ杯・フェド杯などの各チームを統括。各代表が連携を取りながら組織的に強化を図っている。
ブルガリア戦に向け、科学トレーニングや戦力分析などに取り組み、マレーバとカラタンチェバの勝った試合と負けた試合のビデオを繰り返し観て特徴と弱点を分析したという。植田監督は「きめ細やかな戦力分析を選手にたたき込んだ成果。選手はそれに応えて良く力を発揮してくれた。ワールドグループに残るかどうかの崖っぷちで4人の底力を発揮することができた。グランドスラムで戦ってきた彼女たちの自信が表れたと思う」と安堵の表情を見せた。杉山、浅越のベテランに続く、新世代が確かな自信を得た貴重な一戦になった。
負けたブルガリアチームも最後までフェアプレーで素晴らしいテニスを見せた。監督兼エースのマレーバは「とても勝ちたいと思って一生懸命戦ったが、日本の方がそれを上回るプレーをした。森上と中村のこれだけ素晴らしいプレーを見たことがない」と脱帽した様子で、「結果は残念だが、しっかり運営された大会で気持ちよく戦えた」と付け加えた。
日本は地域予選転落の危機を脱し、来年4月22、23日に開催されるワールドグループ2部に臨む。