知ってほしいドーピングの知識(その7):
(財)日本テニス協会発行「JTA NEWS」Vol.59,2000.4.20より

 
日本テニス協会ドーピングコントロール委員会
  横浜国立大学教授
蝶間林 利男
  聖マリアンナ医科大学教授
別府 諸兄
  助川クリニック院長
助川 卓行


ジュニアもドーピングに関心高まる

  平成12年2月27日に「ナショナル強化指定選手トレーニング・測定合宿」で日本体育協会スポーツ科学研究所所長・雨宮輝也先生の「ドーピングについて」の講演がありました。参加者は鈴木貴男選手から11歳のジュニア強化選手まで、大半が中高生で、専門的な用語も多く難解と思われましたが、近い将来の日本のテニスを担い、トップを目指すジュニアにとっても他人事ではないと、全員が最後まで熱心に聴講していました。講演終了後もドーピングコントロール委員を交えて、栄養補助食品などについての質疑応答が盛んに取り交わされました。ドーピングの知識を一般のテニスルールと同様にジュニアの時代から身に付ける指導がこのように普及してきたことは、ドーピングに無知な選手もいる現在のトップ選手にもドーピング自覚の後押しになることが期待され、日本のテニス発展にもつながることでしょう。

海外の栄養補助食品とドーピングの話題

  海外では医薬品成分を含む栄養補助食品に絡むドーピングが問題になっています。英国の陸上のクリスティー選手は蛋白同化ホルモンが陽性となり、争われていましたが、服用していたクレアチンを介しての汚染であったと報道されています。米国のプロ野球ではアンチドーピング規約がないので、大リーグの選手が蛋白同化ホルモンのアンドロステンヂオンを常用していることを公表していました。米国では禁止物質である蛋白同化ホルモンを含有した栄養補助食品も容易に青少年の手に入るようです。

日本の栄養補助食品の現状

  日本の医薬品法は厳重で、ドーピング物質やホルモンを含む外国の未許可の製品は日本の店頭では購入することができません。選手やコーチが素性のわからない外国の栄養補助食品を土産として持ち帰ってやりとりしたり、インターネットなど正規の輸入許可手続きを経ないで入手したり、許可前の試供品を安易に使用しないよう注意が必要です。国内の他の競技で、業者からもらった試供品で興奮剤が陽性となり失格した例があります。選手たちは競技力向上のために栄養管理の必要性を自覚しながら、実際には満腹感を優先して栄養のバランスは崩れがちです。そのため、栄養補助食品を積極的に摂取することが重要であるとの考えが定着しています。選手たちが好んで飲んでいる製品は、たんぱく質の補助食品(プロテイン)、アミノ酸製剤、ビタミン剤、鉄やカルシウムなどのミネラルが占めています。

正しい栄養補助食品のアドパイス

  豊かな筋肉を求めてとるプロテイン(たんぱく質)も、筋肉の疲労を和らげるアミノ酸製剤も、専門家がすべて効果を認めているわけではありません。正しく食事の栄養分析をして不足している栄養素がわかれば、それを補給することは意味がありますが、とりすぎは無駄で、かえって副作用も心配です。ドリンク剤は厚生省から承認されている医薬品ですが、規制物質であるカフェインやアルコールを含有している製品が多く、ドーピング禁止物質であるエフェドリンが含まれているものもあります。強壮剤には筋肉増強作用があり、ドーピンク禁止物質のメチルテストステロンが含有されているものもあります。栄養補助食品もドリンク剤もスポーツにおける効果は明らかになっていません。勝ちたいがために薬物を用いるのがドーピングですが、同じ目的で摂取する栄養補助食品もちょっと間違えればドーピングに陥ることになります。当委員会も他の競技団体も現在のところ選手たちの栄養補助食品の摂取に対して規制することはありませんが、正しい栄養管理の指導の必要性を認めています。ジュニアの頃からの栄養指導がしっかりしていなければ、ますます国際レベルから遅れてしまうことが懸念されます。

終わりに

 平成10年度よりJTAの組織ではドーピング関係委員会が独立した委員会となりました。日本のテニスの国内大会でドーピンク検査が行われるようになって3年目を迎え、国内レベルの選手層にも検査の普及が啓蒙の教育効果をあげていると思われます。ドーピングコントロール委員会は選手を罰するためでなく、選手の健康を守る立場で啓蒙、指導を進めています。

 

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