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日本テニス協会ドーピングコントロール委員会
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| 横浜国立大学教授 |
蝶間林 利男
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| 聖マリアンナ医科大学教授 |
別府 諸兄
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| 助川クリニック院長 |
助川 卓行
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アジア大会の事前ドーピング検査で検出
昨年12月にタイ・バンコクで開かれたアジア大会に出場する日本選手団の事前ドーピング(禁止薬物使用)検査を実施した日本オリンピック委員会(JOC)は、ビリヤード競技の男子選手の尿より筋肉増強作用のある「メチルテストステロン」が検出されたと発表しました。選手は使用を認めて、JOCと日本ビリヤード協会の規定に基づき、2年間の出場資格停止となりました。本人は市販の滋養強壮剤を服用し、その中に禁止薬物「メチルテストステロン」が含まれていました。一方、テニス界では、昨年の全豪オープン覇者、ペトル・コルダ(チェコ)より、昨年7月のウィンブルドン選手権でのドーピング検査の際、筋肉増強剤が検出されました。しかし、国際テニス連盟(ITF)から委嘱を受けた審査委員会は、選手の大会で得た賞金(約1100万円)と、世界ランキングのポイントを剥奪する決定しかしませんでした。そこで、ITFは、ドーピング検査で陽性となりながら軽い処分に終わったコルダ選手に対して、今年の全豪オープンヘの参加を容認するかどうかでもめました。また、2月のスイスでは、国際オリンピック委員会(IOC)の主催により、「ドーピングに関する世界会議」力欄催され、会議には、IOCのほか、国際競技連盟(IF)や国内オリンピック委員会(NOC)などが参加しました。ここでは、懸案になっていたドーピングの統一規定について、「五輪運動反ドーピング規定」が決議され、すべてのIFが、この問題で同一歩調をとることになりました。一部のIF(サッカー、自転車)が、プロ選手の生活権を保証する立場から「重大な薬物違反に対しては最低2年間の資格停止とする」との条項への合意を保留していましたが、IFが例外的な状況下にあると判断した場合、柔軟に罰則規定を適用できるとして、事実上、2年以内の停止期間を容認することになりました。テニスにおける禁止薬物(筋肉増強剤など)では、ITFでは出場停止が1年間だったのが、IOC基準に合わせて2年間も延長されるということです。以上のように、新聞紙上では、ドーピングに関する話題に事欠かないようですが、ドーピングに関する規約はますます厳しくなってきています。さて、わが国では一体どうなっているのでしょうか。
国内テニス大会で初めてのドーピング検査
平成10年11月12日、第73回全日本テニス選手権大会(有明)期間中にドーピング検査が行われました。
目的:ドーピング検査はあくまでも違反者の摘発ということより、まじめにトレーニングをしている一般のクリーンな選手の擁護に主眼を置いて、フェアな競技の大切さという観点から行いました。また、ドーピング検査そのものが世界的なルールの一つとなってきており、検査を実施したことが国際的には大会の評価を高めることにもなります。
規程の改訂:アンチ・ドーピングに関して、日本テニス協会(JTA)内に、ドーピング対策本部が設立され、その中にドーピングコントロール委員会とドーピング判定委員会が置かれました(JTAニュースVol.53 P.21参照)。また、新たに「国内におけるドーピング検査に関する規約」や「ドーピングコントロール・マニュアル」、さらにJTAの競技者登録細則に第9条「競技者はドーピングコントロール委員会から要請を受けた場合、ドーピングテストを受けなければならない」という追加項目を設けました。
対象選手:男子4名(シングルスのベスト8より)、女子4名(シングルスのべスト16より)計8名が佐藤敏夫トーナメントディレクターと、八幡博之トーナメントレフェリーから、それぞれ無作為(くじによる)に、選ばれました。
検査の手順:当日はドーピングコントロール・マニュアル通りに行われ、試合終了後の選手たちはエスコート役のスタッフに付き添われて、有明コロシアム内に設置されたドーピングコントロール室でやや緊張した面持ちで検査を受けました(JTAニュースVol.53 P.20参照)。サンプルは、厳重に保管され、日本で唯一のドーピング禁止薬物の検査機関である三菱化学
Bio Clinical Lago(MBC)に分析を依頼しました。
結果:検査対象者8名のうち1名の検体に禁止薬物である「エフェドリン」が検出され“陽性”と判断されました。
ドーピング検査における陽性
「国内におけるドーピング検査に関する規約」により選手本人の立会いのもと、BMCにおいてB検体(サンプルを2つに分けて封じた片方)についても、分析が行われへそれにも「エフェドリン」が検出されました。「エフェドリン」は感冒薬に含まれ、力ゼの諸症状に効果がありますが、心拍数の増加や血圧上昇などの興奮作用もあります。そこで、ドーピングコントロール委員会は、ドーピング対策本部を通じて、ドーピング判定委員会へ結果を通知しました。ドーピング判定委員会は、規約により、“警告”措置を決定し、最終的に常務理事会の承認のもと、本人宛に警告状が送付されました。今回は“警告”だけの処置に済みました。
気をつけてほしいこと
大会前に医事申告書(使用した薬を記載する)を提出していても、禁止薬物がサンプルに含まれていれば、もちろん処罰は受けます。陽性となった選手は、試合前よりカゼを引き、不注意(無知)で市販薬のドップエルD錠と葛根湯を服用したとのことでした。今までのJTAニュースでも、カゼ薬や漢方薬には禁止薬物が含まれていることがあるので、十分な注意を促してきましたが、残念ながら読んでいなかったようです。ドーピングコントロール委員会では、3年前よりドーピング検査の準備を進め、前大会中には、アンチ・ドーピングのVTR、JOCのアンチ・ドーピング小冊子の参加者全員への配布、パネル展示、ポスターなどの広報を行い、今大会ではドーピング検査の予告と、選手個人へ注意事項のアナウンスを行ってきました。われわれももちろん、アンチ・ドーピング啓蒙活動をさらに広げていく予定ですが、選手自身も他人事とは考えずに、自覚を持って対処していただきたいと思います。不明な点、疑問があれば、JTA内のドーピングコントロール委員会まで問い合わせてください。
コルダの処分に選手たちが反発
昨年(1998)のオーストラリアン・オープン優勝者ペトル・コルダ(チェコ)が、その半年後のウィンブルドンでドーピング検査にひっかかり、処分されたことが、年末、公表されました。ところがその処分が、規定通りでなく、情状酌量(?)して軽かったことから、トラブルになり、最終決着がどうなるか不明のままに時間が過ぎています
コルダは筋肉増強剤ともいわれるステロイドの1種、『ナンドロローン』を摂取したとして、違反に問われました。ドーピング検査で陽性の結果が出た場合には選手にアピール(弁明、異議申し立てなど)の機会が与えられることになっており、コルダもさっそく「身に覚えのないこと。違反薬物が私の体内に入っていたとしても、私は自分でそんなことをやっていない」と述べ、国際テニス連盟(ITF)のドーピンク控訴委員会は、これを受けて「ウィンブルドンで得た賞金9万4529ドルとランキングポイントの没収」という処分を決定、発表しました。この控訴委員会はITF傘下の機関ですが、独立した権限を持っており、その決定は最終のものとされています。ところが、これを知った選手たちが騒ぎ出しました。ステロイドはITFが公表している違反薬物リストの『第1類』に含まれていますが、第1類薬物の違反は、初犯で『出場停止1年』と定められており、「今回の処分は規定に反している。クロなら出場停止処分が当然。それでないなら無罪のいずれかだ」というわけです。控訴委員会はコルダをクロと判定しながら、規定通りの処分を科さなかったのですから、選手たちの言い分ももっともです。数年前、日本で陸上競技短距離の第一人者だった選手が、米国合宿の折、抜き打ち検査でクロとなり、本人はあくまで無実を主張しましたが受け入れられず、2年間の出場停止処分にされています。身に覚えがないという主張が情状酌量の理由になるとすれば、ドーピング防止の見地からは、ゆゆしき問題です。選手側は、したがって、なぜ情状酌量されたのか、その事情、理由を知りたがったわけですが、年が明けてオーストラリアン・オープン中に開かれたITF会長の会見(ATPツアーの代表らも出席)でも、その点は明らかにはされませんでした。一方、選手たちの予想外の反発にITFも驚いたのでしょう。ドーピング控訴委員会の判定(処分内容)は間違いであったとして、スポーツの国際紛争等を解決するためスイスにある『国際スポーツ調停裁判所(CAS)』に、この決定に対する異議申し立てを行いました。しかし、これに対し、コルダ側の弁護人は「ITFが自分の傘下機関である控訴委員会を訴えるのはおかしい」と、ロンドンの英高等法院に異議の無効を申し立て、これを認めてもらいました。このため、ITFとしては処分撒回→再処分への有効な手段を失ってしまいました。もっとも、CASがITFの申し立てに基づいて審査を行っても、4ヵ月はかかるそうですから、問題は風化してしまいます。
渦中のコルダはディフェンディング・チャンピオンとしてオーストラリアン・オープンに出場しましたが、心労がたたってか3回戦でトッド・マーチンに敗れへその後もツアー戦でいい成績を出せないでいます。この間、彼の母国チェコのテニス協会は、彼を『1年間の出場停止』処分としましたが、コルダがチェコ国内で試合することはほとんどなく、97年からはデビスカップ代表も務めていませんので、実質的な影響はありません。また、ITFはATP、WTAの男女両ツアーの了解も得て、2月初めにローザンヌ(スイス)で開かれた国際オリンピック委員会(IOC)のドーピング会議の席上、「現行の初犯者の出場停止1年を、IOCの基準通り2年にする」と申告しました。これにより今後(2月以降)のドーピング違反者は、出場停止2年の処分を科されることになります。ITFの『1年』の規定はゆるすぎるとして、IOCから改正を求められていたものです。ちなみに、ナンドロローンは、水溶性ではないため、当人の知らぬ間に、こっそり当人の飲み物などに投入することはできないそうで、コルダが真に被害者であるとすれば、いったい、どのようにして彼の体内に入り込んだのか、私も知りたい気持ちです。
(広報委員長・後藤忠弘)
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