知ってほしいドーピングの知識(その2):
(財)日本テニス協会発行「JTA NEWS」Vol.53,1998.8.31より

 
日本テニス協会ドーピングコントロール委員会
  横浜国立大学教授
蝶間林 利男
  聖マリアンナ医科大学教授
別府 諸兄
  助川クリニック院長
助川 卓行

 前回は、ドーピングっていったい何なの、ということと、ドーピングの歴史について話をしました。今回は、ドーピング検査とは、また、どんなクスリや飲み物がダメなのかについて、Q&Aの形でみなさんの疑問にお答えします。誤った知識や、そんなこと知らなかった、では許されません。これからは、ドーピングの正しい知識をスポーツのルールと同じように身につけてください。

Q.ドーピング検査は、どのようにして行われるの?

A.検査の手順をイラストで紹介します。全体の流れを把握しておくと、あわてず不安もなく検査を受けることができます。


(イラストをクリックすると大きな画面で見れます)

Q.もし、ドーピングで陽性となったら?
A.
尿サンプルAが『陽性』ならサンプルBを関係者立ち会いのもと検査をし、これも『陽性』であればドーピングを行ったと判断されます。ドーピング判定委員会が最終的に事実を確認後、処分を決定します。この間、選手らは、弁明のため文書による申し立てをすることができます。サンプルBで『陰性』の場合は、処分なしです。

Q.ドーピング検査の対象となった通告を無視して検査を受けなかったら?
A.
ドーピング検査を受けることを拒否した場合も、ドーピング『陽性』と同じ制裁を受けます。

Q.出頭前にもう1試合あるときには?
.シングルスの試合の後にダブルスの試合の予定があり、出頭時間内に行けないということは当然起こり得ます。この場合、認めてくれるだろうと何もしないでいると『失格』になってしまいます。事情を説明して、ダブルスの試合の後に出頭するのでもよいかどうか、きちんと確認する必凄があります。

Q.記者会見などで時間がかかったら?
A.
これも認められません。1時間以内というと少し余裕があると思う人もいるかもしれませんが、実際には、あっという間です。着替え、インタビュー、表彰式などいろいろあるでしょうが、時間は厳守です。

Q.知らないで、かぜ薬を飲んでもドーピングになるの?
.なります。興奮剤の一種、エフェドリンは鼻づまり、せき止めの一般薬に入っていますし、カフェインやプロバノールアミンなども、市販のかぜ薬に含まれ一ていることが多いのです。かぜ薬だけではなく、目薬にもドーピング禁止薬物が含まれていることがあります。つまり、どんな種類のものであっても、薬を使用するときは、スポーツドクターなどの専門家に相談してからという鉄則を守ってください。

Q.大会でかぜをひいたり、ケガをしたらそのとき薬はどうすればよいの?
A.
大会では、スポーツドクターに相談するのが原則です。自分で勝手に薬を飲むのは非常に危険です。家から持ってきた薬だからとか、近くの病院やドクターに出してもらった薬だからといって、安心はできません。医師のすべてがドーピングに詳しいわけではないからです。ドーピング検査が行われる国際大会であっても、医師が治療のために薬を使うのは当然ですが、どうしてもドーピング禁止薬物が含まれている薬をやむを得ず使用する場合、その競技が始まる前に、薬物使用の通告書をチームドクターが、ドーピング検査担当委員会に提出することになっています。いずれにせよ、大会中のあらゆる薬の使用は、スポーツドクターやテニス協会医科学委員会に相談して行うことが大切なポイントです。素人判断は禁物です。

Q.漢方薬は生薬だから大丈夫ですね?
A.
そんなことはありません。やはりドーピング禁止薬物が含まれていることが少なくありません。例えば、漢方薬の麻黄にはエフェドリンが含まれています。漢方薬も薬物の一種なのです。

Q.ぜんそくの薬を使っていたら?
A.
発作止めの薬には、エフェドリンなどの興奮剤が含まれています。では、どうすればよいのでしょうか。IOCの認可している薬がありますので、スポーツドクターやテニス協会に相談して使用するようにしてください。ぜんそくに限らず、その他の慢性疾患で薬を服用している場合には、必ずスポーツドクター、競技に際しては協会の医科学委員会まで正直に相談してください。

Q.栄養ドリンクをよく飲むのですが?
A.
ほとんどの栄養ドリンクには、カフェインやエチルアルコールが含まれています。1本程度ならまず問題になりませんが、一度に何本も飲むと『陽性』となる危険性があります。

Q.コーヒー、紅茶、コーラにもカフェインが含まれていますね?
A.
そうです。しかし、普通に飲んでいる限り、ドーピングで陽性となることはありません。どれくらい飲むと陽性になる可能性があるかは、個人差にもよります。一般的には2〜3時間で6〜8杯のコーヒーに相当する量と考えられています。日本茶やチョコレート、ココアにもカフェインが含まれていますが、普通に飲んだり、食べたりする量ならまず心配はありません。

Q.ビタミン剤は問題ありませんね?
A.
ビタミン剤そのものは問題ありません。しかし、『ビタミン剤』や『栄養剤』と称しながら、実はドーピンク禁止薬物だったということもあります。海外から輸入されたもの、外国人選手からもらったものには要注意です。

Q.塗り薬をよく使うのですが、どんな注意が必要ですか?
A.
消炎・鎮痛剤の塗り薬は大丈夫です。しかし、皮膚炎の塗り薬は念のため、処方した医師やスポーツドクターに聞いておく必要があります。自分では『薬物』を利用する気持ちはなくても、知らないうちにドーピング禁止薬物を飲んだり、食べたりしている可能性があります。ドーピング検査で『陽性』となってからでは手遅れです。
 
海外の国際大会で抜き打ち検査が、よく行われるようになっています。「ドーピングは関係ないよ」と言える選手は少なくなってきたのです。それだけに、ドーピング、ドーピングの検査についてはよく知っておくことが必要です。不明な点や疑問があれば、日本テニス協会ドーピング・コントロール委員会まで、お問い合わせください。(なお、内容についてはJOCのアンチ・ドーピング小冊子より引用しています)

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